「ピラティスに通っているんですけど、どこに効いているのか分からなくて」。——これ、お客さんからよく聞く言葉です。先日も「ピラティスはやりますか?」と聞かれました。うちにはピラティス専用のマシン(リフォーマー)を置いていません。用意できなかったのではなく、置かないことを選んでいます。先に言っておくと、これはピラティスを否定する記事ではありません。リフォーマーは、かなり優れた道具です。それでも置かない理由が1つだけあって、そこが「マシンではできるのに、家では出てこない」という現象と、まっすぐ繋がっています。元々は大学で骨折予防(脊椎の応力解析)を研究していた立場から、体を「イメージ」ではなく仕組みで解説します。
【この記事で分かること】
・リフォーマーが「優れた道具」である理由
・それでも置かない、たった1つの理由
・マシンではできるのに、家で出てこないのはなぜか
・道具を「良い / 悪い」で裁かないための2つの軸
・スミスマシンは使うのに矛盾しないのか
リフォーマーは、優れた道具です
まずここを落としません。落とすと、この先の話が全部ただの悪口になるので。
リフォーマーは、台の上を滑るキャリッジ(座面)とバネ(スプリング)でできています。バネが引いてくれたり、支えてくれたりするので、自分の力では通れない「正しい動きの軌道」を、体に一度通してあげられる。これがすごいところです。
人は、やったことのない動きは分かりません。「お腹で支える」と言われても、支えたことがなければ、どこに力が入るのが正解なのか一生分からない。リフォーマーは、その「正解の感じ」を先に体験させてくれる道具です。入口としては、本当によくできています。
ピラティス自体はどう思っていますか?
良いと思っています。通っていて、体が変わっている実感があるなら、続けてください。この記事は「やめろ」という話では一切ありません。読んでほしいのは、通っているのに「どこに効いているか分からない」人だけです。
置かない理由は1つ。「その助けは、最後まで消えない」
ここが、この記事でいちばん言いたいことです。
バネは、1回目も、100回目も、同じだけ助けてくれます。優しさでもあるんですが、裏を返すと——あなたが上手くなっても、バネは引っ込んでくれない。
マシンの上で完璧にできるようになる。でも、家で同じ動きをやろうとすると出てこない。職場で重い荷物を持つ時にも出てこない。——これは、あなたのせいではありません。覚えたのが「マシンの上での動き」だったというだけです。
なぜ、場所が変わるとできなくなるんですか?
脳が動きを覚えるとき、「動き」だけを単体で覚えているわけではないからです。どんな支えがあって、どんな床で、どこに力を預けられる状況だったか——条件ごと覚えています。
だから条件が変わると、出てこない。バネが5割を持ってくれている状態で覚えた動きは、「バネが5割持ってくれる世界」でだけ再生されるということです。日常には、バネがありません。

これはEMSで腹筋は割れる?の記事で書いた話と、実は同じ形をしています。あちらは「筋肉は動いているのに、自分で動かしていないから残らない」。こちらは「自分で動いてはいるけれど、助けごと覚えているから、助けのない場所で出てこない」。機械が肩代わりした分だけ、外に持ち出せなくなるという一点で繋がっています。
道具を裁く軸は、2つあります
「じゃあ機械は全部ダメなのか」と言われると、違います。ここを1つの軸で語るから、話がおかしくなる。2段階で見ます。
軸① 自分で動いているか?
動かされているだけなら、脳は何も覚えません。EMS・振動系がここで落ちます(EMSの記事)。リフォーマーは、ここは通ります。自分で動いているので、学習は起きています。
軸② その助けは、いつか消えるか?
消える助けなら、最後に残るのは自分の力。消えない助けだと、道具ごと持ち帰らないと再現できない。リフォーマーが引っかかるのは、こちらだけです。

リフォーマーとEMSは、同じ棚に置くべきではありません。格が違います。リフォーマーは①を通っている時点で、道具としてかなり上等です。うちが置かないのは、②だけの理由。「悪い道具だから」ではなく、「うちの仕事と役割がぶつかるから」です。
スミスマシンは使うのに、矛盾しませんか?
鋭い質問ですが、矛盾しません。軌道が固定されるのは同じでも、目的が逆だからです。
スミスマシンは、軌道を固定してもっと重いものを扱うための道具。力を強く発揮する側の話です。リフォーマーは、軌道を固定して力みを抜かせるための道具。静かに支える側の話です。後者は、最終的に「道具なしで静かに支えられること」がゴールなので、道具が残ると目的地に着けない。前者は道具が残っても構いません(そもそも高重量を扱う場が目的地なので)。
うちは、同じことを床の上でやります
やっていることは、実はそんなに違いません。
たとえば骨盤の前傾・後傾のコントロール。ピラティスでも最初の方に習う、基礎中の基礎です。うちもやります。ただ道具ではなく、声掛けで作ります。
ここが手間のかかるところで、同じ種目でも、人によって言い方を全部変えます。骨格も、長年の癖も違うからです。同じ「お尻を締めて」でも、その人が今どこで支えてしまっているかによって、効く言葉が違う。反り腰の人に効く言葉と、丸まっている人に効く言葉は別物です(反り腰の記事)。
正直に言うと、リフォーマー使いたいです
ここからは本音です
一人ひとり声掛けを変えるのは、普通に大変です。セッションが終わるたびに「次のお客さんの癖はあれで……」と、10分の間で考え直しています。
ぶっちゃけると、リフォーマーがあれば、何も考えずに指導できるので楽です。
だから従業員が多い場所には、いいかもしれません。毎回違うトレーナーが担当するなら、お客さんの癖まで把握するのは無理です。そういう現場では、道具が軌道を保証してくれる方が、たぶん安全で、質も揃います。これは皮肉ではなく、本当にそう思っています。
それでも置かないのは、成長の速さが違うからです。声を掛けて、ちゃんと癖を把握して、床の上で「今、骨盤は前傾か後傾か」をお客さんと一緒に考えながらやる。——こっちの方が、伸びるんですよ。
ついでに、使わないデメリットも書いておきます。僕がめっちゃ疲れます(笑)。それだけです。お客さん側のデメリットは、1つもありません。
それに、楽して稼ぐというのが、僕のポリシーに反します。
楽をして、お客さんの成長を遅らせてまで稼ぎたいとは思いません。
とはいえ、世の中的には「ピラティスのマシンがあるから、あっちの方がいいジム」という風潮があるのも知っています。設備が多い方が良く見えるのは、まあ自然なことだと思います。——僕は、そんなのはどうでもいいですけど。
床でやると、どうなりますか?
最初は、うまくできません。できなくて当然です。バネが持ってくれていた分を、自分で持つことになるので。
でも、その「できない」が見えている状態が、正しいスタート地点です。できない場所が分かっているから、そこを1つずつ埋めていける。逆に言うと、道具が上手に隠してくれている間は、どこができていないのかが、本人にも指導者にも見えません。
「どこに効いているか分からない」の正体は、たぶんこれです。効いていないのではなく、助けが多すぎて、どこが自分の力なのか分からない。
【今日の結論】
・リフォーマーは優れた道具(正しい軌道を、体に一度通せる)
・ただしその助けは、上手くなっても消えない
・脳は動きを条件ごと覚える=バネのある世界で覚えた動きは、バネのない日常で出てこない
・道具を裁く軸は2つ=①自分で動くか ②助けは消えるか。EMSは①で落ち、リフォーマーは②だけ
・床でやると最初はできない。その「できない」が見えている状態が正しい
・ピラティスをやめる必要はありません。効いている実感があるなら続けてOK
身体は「イメージ」ではなく、仕組みで考える
道具を「良い / 悪い」で覚えると、次に新しい機械が出てきた時にまた迷います。でも「①自分で動くか ②助けは消えるか」の2本さえ持っていれば、まだ世に出ていない道具でも、自分で判定できます。これが「運動的IQ」です。あわせて、EMSで腹筋は割れる?と、「体が硬い」と言われたらも読むと、道具と体の関係が一周します。栃木県小山市のパーソナルジム PUTTERS では、機械や気合いに頼らず「自分で動いて、日常で使える体」を作る指導をしています。小山市で、ピラティスと迷っている方は、こちらにも書きました。体験・ご相談はお気軽に。
▼ LINEで相談:https://lin.ee/xbGW2yf
※本記事は、特定のスタジオ・流派・指導者を批判する意図はありません。運動の効果には個人差があります。痛みのある方・治療中の方は、必ず主治医の指示に従ってください。

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