正直に書きます。僕は昔から、ホットヨガを勧めていません。暑い部屋が嫌いだから、という話ではなく——暑い環境は、運動を”下手にする”からです。この記事では、暑い中で体を動かすと何が起きるのかを4つに分けて書きます。元々は大学で骨折予防(脊椎の応力解析)を研究していた立場から、根性論ではなく仕組みの話をします。
【この記事で分かること】
・暑い中で運動すると、体と脳に何が起きるか
・「脳が悪い動きを覚える」の意味
・暑いと内臓が疲れる、その理由
・それでもホットヨガに向いている人
ホットヨガは痩せる? 先に、汗の話だけ片付けます
大量に汗が出るので「効いている」感覚は、たしかにあります。ただ汗は体を冷やすための水で、脂肪が減った量とは関係ありません。減った体重は、水を飲めば戻ります。
ここは汗をかくと痩せる?の記事に書いたので、そちらに譲ります。この記事で書きたいのは、その先——暑い中で動くこと自体の問題です。
「サウナの中で受験勉強してる感じ」
お客さんによく、この言い方をします。暑い中でのトレーニングは、サウナの中で受験勉強しているようなものです。
時間は使っている。汗も出ている。本人もがんばっている。でも、身についていない。——そして、これは比喩ではなく、体の中で本当に同じことが起きています。理由を4つに分けます。
暑い中でのトレーニングを勧めない4つの理由
①集中できない/②いいパフォーマンスが出ない/③脳が悪い動きを覚える/④内臓が疲れる
①暑いと、集中できない
体の奥の温度が上がると、注意を保つ力や、複雑な判断の精度が落ちます。これは運動とは関係なく起きることで、暑い部屋で勉強しても同じです。
トレーニングは、本来かなり頭を使う作業です。どこに力を入れて、どこを抜くか。今の動きは合っていたか。その判断が鈍った状態で、体だけ動かしていることになります。
②同じ運動なのに、きつくなる
暑いと体は、冷やすことに資源を回します。皮膚に血を送り、心拍が上がる。その結果、同じ重さ・同じ距離でも「きつさ」が増します。
きついのだから効いている、ではありません。出せる力が下がった状態で、練習しているということです。同じ1時間なら、涼しい部屋の方が「良い動き」を多く積めます。
③脳が、悪い動きを覚える
ここが一番もったいないところです。
疲れてくるとフォームは崩れます。そして脳は、崩れた動きも同じように覚えます。「良い動きだけを覚える」という機能は、人間には付いていません。回復していないのにインターバルを短くすると変な癖がつくのと、まったく同じ話です。
暑さは、この状態を早く連れてきます。本来なら30分もつ集中が、10分で切れる。そのあとの50分は、崩れた動きを練習している時間になります。
④内臓が疲れる
これは感覚の話ではなく、血の配り方の話です。
暑いとき、体は皮膚に血を回して熱を逃がそうとします。血の総量は決まっているので、その分どこかが減る。減るのが内臓です。とくに腸は血の巡りが落ちるとバリア機能が緩みやすく、暑い中の運動で胃腸の調子が悪くなるのは、これが理由です。
「暑い中で運動したあと、なんとなく気持ち悪い」。あれは気のせいではありません。
じゃあ、ホットヨガは全部ダメ?
そこまでは言いません。フェアに書きます。
否定しない部分
・気持ちがいい、スッキリする(続く理由になる)
・体が温まっている方が、動かしやすいと感じる
・通う場所ができて、習慣になる
運動は、続かなければ意味がありません。続く場所があること自体は、価値です。
それに、暑さに体を慣れさせる訓練(暑熱順化)は、夏に試合や大会がある人にとっては、目的のあるトレーニングです。理由があってやるなら、間違いではありません。
ズレるのは、目的が「痩せたい」「動ける体になりたい」のときだけです。その目的なら、暑さは足を引っ張る側に回ります。
運動には、適切な温度があります
暑すぎると、ここまで書いたことが全部起きる。かといって寒すぎると、筋肉も関節も硬くなってケガに近づきます。
答えは真ん中です。涼しいと感じるくらいの部屋で、動いているうちに体が温まる。これが一番、良い動きを積める環境です。温度の話は汗の記事にもう少し詳しく書きました。
【今日の結論】
・暑い環境はやる気ではなく、能力を削る
・集中が切れる/同じ運動がきつくなる/崩れたフォームを脳が覚える/内臓の血が減る
・例えるならサウナの中で受験勉強——時間は使うが、身につかない
・気持ちよさ・続けやすさは否定しない。目的が「痩せる・動ける体」のときだけズレる
・狙うのは涼しい部屋で、良い動きを多く積むこと
身体は「イメージ」ではなく、仕組みで考える
きつい=効いている、汗が出た=燃えた。この2つの思い込みを外すだけで、選ぶ環境が変わります。トレーニングで積んでいるのは回数ではなく、良い動きの本数です。だから、良い動きが出せない環境は、それだけで損をしている。これが「運動的IQ」です。あわせて、汗をかくと痩せる?と、脳は悪い動きも覚えますか?もどうぞ。栃木県小山市のパーソナルジム PUTTERS では、機械や気合いに頼らず「自分で動いて、日常で使える体」を作る指導をしています。体験・ご相談はお気軽に。
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※本記事は一般的な生理学の考え方と、筆者個人の指導経験をまとめたものです。特定のスタジオ・団体・指導者を批判する意図はありません。
※暑い環境での運動は熱中症の危険があります。体調に異変を感じたらすぐ中止し、水分と塩分を補給してください。持病のある方・妊娠中の方・治療中の方は、必ず主治医の指示に従ってください。

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