シトルリンのサプリを1年飲んで、やめました。今はスイカで摂っています。——先に正直に書きますが、これは「スイカの方が優秀だから」という話ではありません。量では、サプリの圧勝です。それでも僕がスイカを選んでいる理由と、その判断のどこまでが科学の話で、どこからがただの僕の体感なのかを、線を引いて書きます。元々は大学で骨折予防(脊椎の応力解析)を研究していた立場から、体を「イメージ」ではなく仕組みで解説します。
【この記事で分かること】
・シトルリンは、そもそもスイカから見つかったアミノ酸だということ
・体の中で何をしているか(血管とアンモニアの、2つの仕事)
・買う必要がある人と、要らない人の線引き
・スイカで「サプリ1回分」を摂るには、何g食べればいいのか
・僕が1年で失敗した理由(犯人はシトルリンではありませんでした)
シトルリンは、スイカから見つかったアミノ酸です
ここが、この成分のいちばん面白いところだと思っています。
1914年、日本の研究者(古賀・大嶽)がスイカの果汁から取り出したのが最初です。その後1930年に構造がはっきりして、名前が付きました。名前の由来は、スイカの学名 Citrullus(キトルルス)。シトルリンという名前は、最初からスイカのことなんです。
つまり「サプリの成分をスイカで摂る」のではなくて、順番は逆。スイカに入っていたものを、後から粉にして売っているだけです。
シトルリンは、タンパク質の材料になりますか?
なりません。アミノ酸ではあるけれど、体をつくる20種類の外側にいる仲間です(オルニチン・タウリン・GABA・β-アラニンと同じ箱)。筋肉になる材料ではなく、体の中で「働き」をするタイプのアミノ酸だと思ってください。
シトルリンの仕事は、2つあります
① 血管をゆるめる係(NO)
シトルリンは体の中でアルギニンに変わり、そこから一酸化窒素(NO)が作られます。NOは血管の内側に「力を抜け」と伝える物質。血管がゆるむ=血が流れやすくなる。これが「パンプ感」「血流」を掲げて売られる理由です。
② アンモニアの片づけ係(尿素回路)
運動で出るアンモニアは、体にとってはゴミです。シトルリンは、それを尿素に変えて捨てる回路の途中の部品。「疲労」「回復」と書かれているのは、こっちの話です。
アルギニンを飲むのでは、ダメなんですか?
ここが、地味だけど本当に面白い話です。アルギニンを飲んでも、アルギニンはあまり増えません。
口から入れたアルギニンは、腸と肝臓で先に分解されてしまうからです。ところがシトルリンは、そこを素通りして腎臓まで行き、そこでアルギニンに化ける。結果、アルギニンを増やしたいなら、アルギニンよりシトルリンを飲む方が効率がいいという、ねじれたことが起きます。
逆に、アルギニンはシトルリンになりますか?
なります。ここが、この成分のいちばん綺麗なところです。
体がNOを作るとき、材料になるのはアルギニンです。そしてNOを切り出したあとに残るのが、シトルリン。血管の細胞は、その残ったシトルリンをその場でアルギニンに戻して、また使います。
つまり一方通行ではなく、輪っかです(シトルリン–NOサイクルと呼ばれます)。減っていく消耗品ではなく、同じ材料をぐるぐる回している。スイカに入っていたものが、体の中でも回り続けているわけです。
ではなぜ、飲むならシトルリンの方が得なのか。化学が一方通行だからではなく、通り道の問題です。飲んだアルギニンは、腸と肝臓にいるアルギナーゼという酵素に食われてしまう。シトルリンはその酵素の相手ではないので、食われずに素通りできる。関所を通れるかどうかの話であって、成分の格の話ではありません。
結局、買った方がいい人はいますか
先に、ここを決めてしまいます。目的ではなく、週に何回トレーニングするかで分かれます。
週1〜2回なら、要りません。
回復が追いつかなくなるほど、そもそも回数が詰まっていません。運動とタンパク質と睡眠で埋まる範囲です。この記事の残りは、読み物として読んでください。
これから週5回に増やすなら、話が変わります。
前の日の疲れが抜けきる前に、次が来る。ここで初めて買う必要が出てきます。そういう予定がある人は、買う前に相談してください(記事の最後にLINEを置いています)。
買うとしたら、どれを買えばいいですか
棚に並んでいるのは、だいたいアルギニンかシトルリンか、その2つを混ぜたものです。選ぶのはシトルリンの方、それも「100%」と書いてある無添加の粉です。理由は上に書いた通りで、アルギニンは飲んでも関所で食われます。
メーカーによって、違いはありますか?
「100%」の粉なら、ほぼありません。ここは正直に書いておきます。
シトルリンは、味の好みで選ぶプロテインとは違います。中身は、どのメーカーでも同じシトルリンです。原料をたどると同じ工場に行き着くことも、珍しくありません。パッケージと値段が違うだけ、ということが普通にあります。
だからブランドで悩む必要はありません。見るところは2つだけです。
① 1gあたり、いくらか
容量が違うので、袋の値段では比べられません。値段÷グラム数で見ます。
② 余計なものが入っていないか
「アルギニン配合」「クエン酸配合」「◯◯味」と書いてあるものは、そのぶんシトルリンが減っています。成分表示に、シトルリン以外の名前が並んでいないものを選べば大丈夫です。
下に僕が選んだものを置いていますが、これでなければいけない理由はありません。同じ「100%」で、安いものがあればそっちで構いません。
※本ページはアフィリエイトリンクを含みます。紹介は松本の判断によるもので、報酬の有無で内容は変えていません。「買わなくていい」と書いたものにもリンクを置いているのは、現物を見ないと判断できないからです。
ここから先は、僕が1年間かけて間違えた話です
買い方の話は、上で終わりです。ここからは失敗談なので、要らない人はそのつもりで読んでください。
僕が飲んでいたのはシトルリンマレート——シトルリンにリンゴ酸をくっつけた粉です。買った理由は「回復にいい」と書いてあったから。それだけです。
その前はアルギニンを飲んでいて、下痢でやめました。だから「関所を通れるシトルリンなら」と乗り換えたんです。乗り換えの理屈自体は、合っていました。ところが——シトルリンでも、下痢をしました。
犯人は、シトルリンではありませんでした
今なら分かります。くっついていたリンゴ酸の方です。
素のシトルリンは、1回にかなりの量を飲んでもお腹が平気だったという報告があります。ところがリンゴ酸が付いた形になると、胃腸の不快を訴える人が出てくる。そしてこの「酸っぱい」と「お腹に来る」は、同じ犯人です。
成分を疑って乗り換えたのに、原因は成分ではなくそこにくっついてきたオマケだった。当時の僕は、いちばん要らないものを一緒に買っていたわけです。
それと、量も間違えていました
研究で使われる量(シトルリンで1回3〜6g)を、そのまま飲む必要はどこにもありませんでした。おそらく正解は「1gくらいに減らす」です。お腹が受け取れる量まで落としていれば、たぶん違った。
僕は「書いてある量が正解」だと思い込んで、体が出していた「多すぎる」というサインを、成分のせいにしていました。サプリで合わなかった時、疑う順番は「成分」より先に「量」と「形」です。
やめた本当の理由は、効果ではありません
酸っぱいからです。
体感の話も書いておくと、いちばん最初に飲んだ時だけ、パンプ感があった気がします。「した」ではなく「した気がする」です。それ以降は、はっきりした変化はありませんでした。β-アラニンのピリピリみたいに、誰が飲んでも分かる合図が出るタイプの成分ではありません。
そして飲むタイミングです。シトルリンマレートはトレーニングの前や最中に飲む設計なので、僕はセット間のインターバル中に飲んでいました。あれが一番の苦痛でした。しかもEAAに混ぜていた。酸っぱい粉と、もともと薬みたいな味のする粉。息が上がっている時に、あれを流し込む。1年が限界でした。
僕が飲んでいたのは、これです
失敗の現物です。「マレート」と付いているのが、リンゴ酸のこと。買うならこれではなく、上のシトルリン100%の方です。
スイカで摂ると、量は足りるのか
ここからが本題です。ごまかさずに計算します。
スイカの果肉に入っているシトルリンは、100gでおよそ150〜350mg(品種差が大きく、平均で240mgくらい)。サプリの1回分は3〜6gでした。
【スイカ換算】
・ひと切れ(果肉150gくらい)= 約0.36g。サプリ1回分の8分の1
・4分の1カット(果肉1.2kgくらい)= 約2.9g。ここでやっとサプリ1回分の下限
・大玉まるごと(果肉4kg級)= 約9.6g。研究で使う量を、普通に超える
つまり「スイカじゃ全然足りない」も「スイカで十分」も、どっちも雑だったということです。デザートのひと切れでは、まったく届かない。でも4分の1カットを1人で食べる人なら、実はサプリの1回分に手が届いています。
じゃあ毎日スイカを食べればいいんですか?
そこはタダではありません。果肉1.2kgなら、糖質はおよそ110g・450kcal前後。ごはん2.5杯ぶんくらいです。シトルリンを3g摂るために、ごはん2.5杯を足しているとも言えます。
「食べ物から摂った方が偉い」ではありません。粉なら3gで済むところを、1.2kgかけて摂っている。効率の話をするなら、これはサプリの完勝です。減量中の人に「スイカで摂りましょう」と言うつもりは、僕にはありません。
それでも僕は、スイカを選んでいます
マッチョな友達がいます。そいつがこう言いました。
「シトルリンはサプリだと入ってる感じがしない。スイカで摂るのが一番、体に入る感じがする」
そいつは毎日、夜のヨークベニマルで半額シールの貼られたスイカを買っています。栄養学の話ではなく、完全に生活の話です。
そして僕も、同じことを思っています。
「体に入る感じがする」は、科学ですか?
違います。ここははっきりさせておきます。
体感を、科学のフリで語り出した瞬間に、その話は嘘になります。「入る感じがする」は測れないし、僕が測ったわけでもない。だから僕は、これを効果として書きません。
それでも、僕はスイカの方を選んでいます。理由は判断として間違っていないと思っているからです。食べ物から摂れるものを食べ物から摂る、というのは、効率で負けていても、続く側の選択です。実際、酸っぱい粉は1年でやめて、スイカは夏になると勝手に食べています。やめなかった方が、結果的に摂れている。
僕がやりたくないのは、体感を根拠として売ることの方です。「入ってる感じがする」を広告に書いた瞬間、それは効くと信じて売っていた頃の僕と同じことになる。だから体感は体感のまま、ただの僕の話として置いておきます。
【今日の結論】
・週1〜2回なら、要りません。週5回に増やすなら、買う前に相談を
・買うならアルギニンではなくシトルリン、それもリンゴ酸の付いていない100%を1gから
・シトルリンは、スイカから見つかって、スイカから名前を取ったアミノ酸
・仕事は2つ=血管をゆるめる(NO)とアンモニアの片づけ(尿素回路)
・アルギニンとシトルリンは輪っか。飲むならシトルリンが得なのは関所を通れるから
・スイカ換算=ひと切れでは1回分の8分の1、4分の1カットでやっと1回分(ただし糖質110g)
・僕がやめた理由は「効かないから」ではなく「酸っぱいから」
身体は「イメージ」ではなく、仕組みで考える
サプリの良し悪しを覚えるより、「これは何をしている物質で、自分はどっちを選ぶのか」を自分で置ける方が強い。量で勝つのはサプリ、続くのは食べ物。その両方を知った上で選んだなら、どちらを選んでも間違いではありません。危ないのは、体感を効果だと思い込んだまま買い続けることだけです。これが「運動的IQ」です。あわせて、アミノ酸500種類の話と、L-カルニチンが要らない理由も読むと、サプリ棚の見え方が一周します。栃木県小山市のパーソナルジム PUTTERS では、機械や気合いに頼らず「自分で動いて、日常で使える体」を作る指導をしています。体験・ご相談はお気軽に。
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※本記事は一般的な栄養・生化学の考え方と、筆者個人の体験・感想をまとめたものです。サプリの体感はすべて筆者1人の感想であり、効果を保証するものではありません。
※スイカのシトルリン量は品種・産地・熟度で大きく変わります。記事中の換算は平均値からのおおよその目安です。
※持病のある方・治療中の方・妊娠中の方、血圧の薬(特に血管を広げる薬)を飲んでいる方は、シトルリンやアルギニンのサプリ利用について必ず主治医にご相談ください。

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