「今日はいっぱい汗をかいたから、痩せたはず」。ジムでよく聞く言葉です。先に結論を書くと、汗の”量”は、脂肪が減った量とは関係ありません。ただし汗の”かきやすさ”には意味があります。——この2つは、まったく別の話です。元々は大学で骨折予防(脊椎の応力解析)を研究していた立場から、汗と体温と消費カロリーを整理します。
【この記事で分かること】
・汗をかいて減った体重の正体
・「汗をかきやすくなった」が意味していること
・運動に適した温度(寒い方がいい理由と、寒すぎるとダメな理由)
・南極で1日7,000kcal使う、本当の理由
汗をかくと痩せる? 汗は「体を冷やすための水」です
体温が上がると、体は汗をかきます。皮膚から水が蒸発するとき熱を持っていくので、それで体を冷やしている。汗は、冷却装置です。
だからたくさん汗をかいている=脂肪を燃やしている、ではありません。暑い場所にいれば、座っていても汗は出ます。
汗をかいた後に体重が減っているのは、なぜ?
出ていった水の重さです。だから水を飲めば戻ります。サウナスーツを着て運動して1kg減っても、それは脂肪1kgではなく、水1リットルぶん。
むしろ、水が減った状態で運動を続けると血液が濃くなって心臓に負担がかかるし、パフォーマンスも落ちます。水分補給の話で書いたとおり、減った水は戻すのが正解です。
でも「汗をかきやすくなった」には、意味があります
ここからが本題です。汗の”量”は脂肪と関係ない。でも前より汗が出やすくなった、という変化そのものは、体が変わったサインになり得ます。
理由は筋肉が、熱を作る器官だからです。筋肉量が増えると、発熱量が増える。体は熱を出すほど冷やす必要があるので、汗が出やすくなります。
汗をかく=筋肉が増えている”可能性”がある、という一個の指標。
断定はできません。暑さに体が慣れても汗は出やすくなるからです。あくまで指標のひとつとして見てください。
つまり見るべきなのは「今日どれだけ汗をかいたか」ではなく「前より出やすくなったか」。1回の量は、その日の気温と服装で決まってしまいます。
脂肪燃焼サプリで「汗をかくようになった」のは効いている?
レビューでよく見る感想です。でも発汗が増えたことは、脂肪が減った証拠にはなりません。ここまで読んだ方なら分かるとおり、汗は熱を逃がすために出るものだからです。
僕は昔、その脂肪燃焼サプリを売る側にいました。中身の主役だったL-カルニチンについては、1年飲んでやめた話に書いています。
運動には、適切な温度があります
そしてここが、たぶん一番言いたいところです。暑い環境は、運動に向いていません。
暑いと体は、冷やすことに資源を使います。皮膚に血を回し、心拍を上げ、水を捨てる。同じ運動なのに、きつくなる。出せる力が下がった状態で練習していることになります。
逆に、涼しい・少し寒いくらいの環境の方が、消費するエネルギーは増えます。体温を保つためにエネルギーを使うからです(褐色脂肪細胞が働くのも、この場面)。
じゃあ、寒ければ寒いほどいい?
それも違います。寒すぎると、関節に悪い。筋肉も関節も、冷えると動きが硬くなります。硬いまま動かせば、当然ケガに近づく。
だから答えは真ん中です。暑すぎず、体が冷えきらない温度。「汗がだらだら出る部屋」でも「震える部屋」でもない、涼しいと感じるくらいの環境が、運動には一番向いています。
南極では1日7,000kcal。ただし理由は「寒いから」ではありません
面白い数字があります。南極を歩いて横断する隊員は、1日に7,000kcal前後を消費します。一般的な成人男性の目安が1日2,600〜2,700kcal(厚生労働省の食事摂取基準・活動量ふつう)なので、およそ3倍です。
ただし——正直に書きます。この7,000kcalの大半は、寒さのせいではありません。重いソリを引いて、何時間も歩き続けているからです。寒さは、そこに上乗せしているだけ。
ここを勘違いすると「寒い部屋にいれば痩せる」になってしまいます。なりません。寒さはおまけで、主役はいつも動いていることです。
ゴールドジムより、コールドジムかもしれません
ここまでをまとめると、こうなります。汗を出すために部屋を暑くするのは、逆。涼しい部屋で、しっかり動く。——つまりGOLD(金)のジムより、COLD(寒い)のジムの方が痩せるかもしれない、という話です。
もちろん冗談半分ですが、半分は本気です。汗は結果であって、目的ではありません。汗を目的にした瞬間、部屋を暑くする・厚着をする・水を控える——全部、運動そのものを下手にする方向に進んでしまいます。
ちなみに「暑い中でトレーニングすると、具体的に何が起きるのか」は、もう少し踏み込んだ話になるのでホットヨガの記事に分けて書きました(集中力・フォーム・内臓の話です)。
【今日の結論】
・汗は体を冷やすための水。減った体重は水で、飲めば戻る
・ただし「前より汗が出やすくなった」は、筋肉量が増えている可能性を示す一個の指標
・見るのは1回の量ではなく変化
・運動には適切な温度がある。暑いと力が出ない/寒すぎると関節に悪い
・南極の7,000kcalは寒さでなく、歩き続けているから
・汗は結果であって、目的ではない
身体は「イメージ」ではなく、仕組みで考える
汗をかくと痩せた気がする——その感覚自体は、間違いではありません。きつい運動をすれば汗は出るので、汗はがんばった”結果”として、いつも隣にいるからです。ただ、隣にいるものと原因は違う。ここを分けられるようになると、体のことで騙されなくなります。これが「運動的IQ」です。あわせて、脂肪燃焼サプリを売っていた頃の話と、水分補給の考え方もどうぞ。栃木県小山市のパーソナルジム PUTTERS では、機械や気合いに頼らず「自分で動いて、日常で使える体」を作る指導をしています。体験・ご相談はお気軽に。
▼ LINEで相談:https://lin.ee/xbGW2yf
※本記事は一般的な生理学の考え方と、筆者個人の経験をまとめたものです。消費エネルギーの数値は目安であり、体格・活動量・環境によって大きく変わります。
※暑い環境での運動は熱中症の危険があります。体調に異変を感じたらすぐ中止し、水分と塩分を補給してください。持病のある方・治療中の方は、必ず主治医の指示に従ってください。

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