二の腕を細くしたいので、腕のトレーニングは避けている。アームカールをやっても、力こぶに効いている感じがしない。買い物袋や重いカバンを持つと、腕ではなく肩と首が疲れる。
パーソナルトレーニングをしていると、この相談をよく受けます。そして皆さん、決まって同じことを言います。「腕が太くなるのが嫌なんです」と。
私からすると、逆です。細くしたい人ほど、二頭筋はやったほうが効率がいいです。
累計17,000セッションの指導をしてきましたが、二頭筋は「やらなくていい」と思われている筋肉の代表です。しかも、やらないことのデメリットが腕ではなく肩と首に出るので、原因として気づかれません。
「女性に二頭筋はやらせるな」と言われていました
東京でパーソナルトレーナーをやっていた頃、上司にこう言われていました。
「女性のお客さんには、太くなるから二頭筋のトレーニングはしないでね」
当時はそう教わるのが普通でした。今もネットには同じ話が並んでいます。日常から使っている筋肉だから鍛えなくていい。鍛えるとムキムキになる。腕は二の腕(三頭筋)だけやればいい。
二頭筋を鍛えると、本当に腕は太くなりますか?
種目のせいでは太くなりません。決めているのは種目ではなく、重さと回数です。
1〜2kgのダンベルで15回を1セット。これで太くなることはありません。同じアームカールでも、重い重量で3〜5セット追い込めば太くなります。
同じ種目で、細くも太くもなるということです。だから「アームカール=太くなる」という切り分け自体が成り立ちません。
上腕二頭筋は、肩甲骨と「橈骨」をつないでいる
細くするにも太くするにも、構造が分かっていないとトレーニングになりません。ざっくり説明します。
上腕二頭筋は、名前のとおり2つあります。長頭と短頭です。どちらも肩甲骨から始まって、肘を越えて前腕につきます。二頭筋には長いのと短いのがある、くらいで大丈夫です。
2つとも覚える必要がありますか?
ありません。この2本は肩甲骨の別々の場所から始まっていますが、今日の話では区別しなくて構いません。大事なのは、反対側がどこについているかのほうです。
動かすのは、手のひらではありません
ここが今日の全部です。
肘についていると思われがちですが、二頭筋がつくのは前腕の骨です。前腕の骨は2本あって、そのうちの1本、橈骨(とうこつ)につきます。
橈骨は、どうやって見分けますか?
覚え方があります。親指は「お父さん指」と言いますよね。お父さんの「とう」=橈骨の「とう」。手のひらを上に向けた時、親指側にあるほうの骨が橈骨です。
整理すると、上腕二頭筋は肩甲骨と橈骨をつないでいる筋肉です。
(正式には、長頭は関節上結節、短頭は烏口突起から始まり、どちらも橈骨粗面につきます。場所を覚える必要はありません)
ここまで分かると、よくある間違いが見えてきます。腕を曲げる時、多くの人は手のひらを動かしています。でも二頭筋がついているのは橈骨です。動かすのは橈骨です。
自分の腕で確かめてみてください
ここからは、読みながらできます。ダンベルは無くても大丈夫です。
まず、反対の手で力こぶの部分を触ってください。そのまま腕を曲げる、伸ばすを繰り返します。筋肉が縮んだり伸びたりするのが分かりますか。それが上腕二頭筋です。
次に、手のひらを上に向けます。力こぶに置いた指に、橈骨を近づける。そして遠ざける。
手首は動かしません。手のひらを動かそうとすると、手首と前腕の動きが混ざって、二頭筋から離れていきます。
細くしたい人は、何回やればいいですか?
1〜2kgのダンベルで15回を1セット。それで十分です。追い込む必要はありません。
太く大きくしたい人は、同じ動きを重い重量で3〜5セット。やり方次第で、行き先が変わります。
大事なのは、曲げる時ではなく伸ばす時
この種目で大事なのは、曲げた時の縮みではありません。伸ばしていく方向です。
ただ、「曲げる時は分かるけど、伸ばしていくと力が抜ける」という人がとても多い。
伸ばす時に力が抜けないようにするには?
答えがあります。逆側の二の腕、上腕三頭筋に力を入れると、抜けなくなります。
手のひらを上に向けた時、上にあるのが上腕二頭筋。下にあるのが上腕三頭筋です。二頭筋の裏側にあります。
二頭筋と三頭筋は、お互いを上手にする
以前、キックバックという三頭筋の種目について書きました。
あの種目で腕を伸ばすと、三頭筋が縮みます。その瞬間、二頭筋は伸びています。逆に腕を曲げると三頭筋が伸びて、二頭筋が縮みます。
つまりこの2つは、協力し合っている筋肉です。キックバックが上手になれば、二頭筋を伸ばすのが上手になる。二頭筋を伸ばすトレーニングをすれば、キックバックが上手になる。お互いがお互いを上手にします。
腕を鍛えるとなると三頭筋の種目ばかり紹介されますが、二頭筋をやらないのは、細くしたい人にも太くしたい人にも非効率です。ここはペアでやったほうが早い。
買い物袋で肩が凝るのは、二頭筋が使えていないから
「日常から使っている筋肉だから、筋トレはいらない」という話に戻ります。
スーパーの帰りに袋を持っている時、通勤で重いカバンを持っている時。ここでも二頭筋は使われています。
そして、腕を伸ばして持ちますよね。これは二頭筋が伸びている状態です。
なぜ、腕ではなく肩が疲れるんですか?
ここの力が抜けているからです。腕で支えられない分を、首や肩が代わりに支えます。だから凝る。
「重いものを持つと肩に来る」は、だいたいこれです。つまり、日常で使えていない。
二頭筋を強くして、二頭筋だけで支えろという話ではありません。持つ時に、肩も腕も均等に使えるようにしたい。そのためのトレーニングです。
そして二頭筋は、肩甲骨につながっている
長頭も短頭も、どちらも肩甲骨から始まっています。
肩甲骨についている筋肉は、17個あります。そして、その一人一人が仕事を完璧にこなしているわけではありません。だから、個別に動かせるようにしていく必要があります。ここを全部動かせるようになると、肩や首まわりの悩みが減ります。
前回のキックバック(上腕三頭筋の長頭)も、肩甲骨につく筋肉のひとつでした。今回の二頭筋は、そこから数えて次の1本になります。
まとめ
二頭筋のトレーニング=太くなる、ではありません。決めているのは種目ではなく重さと回数です。動かすのは手のひらではなく橈骨。そして二頭筋が使えていないと、荷物を持った時に首と肩が代わりに支えます。
細くしたい人は、追い込む必要はありません。1セットでいい。まずは力こぶに指を置いて、橈骨を近づける・遠ざけるを確かめるところから始めてください。
最後に、私の動画も記事も全部そうなんですが、単語は覚えなくて大丈夫です。橈骨という名前は忘れてもらって構いません。「手のひらじゃなくて、親指側の骨」という雰囲気だけ、持ち帰ってください。
動画で見る(実技つき)
力こぶを触りながらのアームカール、橈骨と肩甲骨の解剖図、伸ばす時に力を抜かない練習、キックバックとの関係は動画で見られます。
身体は筋肉ではなく、物理現象として読み解く。これが「運動的IQ」です。身体の使い方を、どの動画から見ても学べる運動の教科書を、数年かけて作っています。
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