腹筋をやっても、上体が全然上に上がらない。腹筋をすると、なぜか腰が痛くなる。
パーソナルトレーニングをしていると、この相談を本当によく受けます。そして皆さん、決まって同じことを聞いてきます。「私、腹筋が弱いんですかね?」と。
私からすると、違います。腹筋が弱いんじゃありません。背骨が動いていないだけです。
累計17,000セッションの指導をしてきて、「初対面で1番最初に見るところはどこですか」と聞かれたら、私は迷わず「背骨」と答えます。それくらい、背骨の可動域はトレーニングでもダイエットでも大事な場所です。
まず、背中を反らせてみてください
いきなり解剖の話をしても入ってこないと思うので、先に体感してもらいます。
背中を反らせと言われたら、どこが動きますか?
たぶん、多くの人が腰を反らします。
では、背中を丸めてくださいと言われたら?
今度は肩甲骨のあたりを丸める人が多いんじゃないでしょうか。
同じ「背中」なのに、反らす時と丸める時で、動かしている場所が違う。背骨と一口に言っても、場所によって動き方がまったく違うということです。
背骨は3つに分かれている
背骨は、上から順番に頚椎・胸椎・腰椎に分かれています。ざっくり言えば、首の骨が頚椎、背中の骨が胸椎、腰の骨が腰椎です。
急に知らない単語が3つ出てきて混乱すると思いますが、覚えるのは真ん中の「胸椎」だけで大丈夫です。私が見ているのも胸椎です。ここがどれくらい動くかで、その人に出すメニューが変わります。
使うのは胸椎だけ、と覚えてください
解釈としては、こう思っておいてください。胸椎は使う。腰椎は使わない。頚椎も使わない。
さっき背中を反らせた時に腰が動いた人は、腰椎で反っています。本当は胸椎で反ってほしいところを、腰が代わりに動いてくれている状態です。
肋骨は、胸椎から出ている骨
ここが、知らない人が多いところです。
大きく息を吸ってみてください。肺が膨らんで、肋骨が横に広がったと思います。息を吸えば、肋骨は動きます。
では次に、肋骨を縦方向に動かしてみてください。背中を動かさないと、動かないですよね。
なぜかというと、肋骨は胸椎から出ている骨だからです。胸椎が12個あって、肋骨も左右12個ずつある。つまり肋骨は、胸椎に動かされているんです。
「胸を張れ」は「胸椎を反らせ」という意味
余談ですが、トレーニングでよく言われる「胸を張れ」という言葉は、解剖的に言えば「胸椎を反らせ」という意味になります。
腹筋は、4チームで動いている
ここからが本題です。
腹筋は、単体では動きません。骨盤・腹筋・肋骨・胸椎、この4つが常にセットで動いています。そして今言ったとおり、肋骨は胸椎に動かされている。
結論を言うと、腹筋の可動域は、自分で動かせた胸椎の可動域で決まります。
だから、腹筋をやって上体が上がらない人は、腹筋が足りないんじゃありません。その手前にある胸椎が止まっているだけなんです。上げようとして首や腰で頑張っても、背骨が動かないなら上体は上がりません。
腹筋を鍛える近道は、腹筋の回数を増やすことではなく、胸椎を動かせるようにすることです。
やることは1種目だけ。キャットバックを1日5回
やり方
四つん這いになって、軽く手で床を押しながら、肩甲骨のあたり、つまり胸椎を丸めます。丸めた部分を、元に戻す。それだけです。
最終的には背骨を反らすところまでやりますが、最初のうちは反らそうとすると腰を反らせてしまう人が多いので、戻すところまでで大丈夫です。
1日5回。それを繰り返して、少しずつ可動域を取れるようにしていきます。
腰は動いていい。でも、動かしに行かない
1個だけ線を引きます。キャットバックで腰が動くのは大丈夫です。でも、自分で腰を動かしに行くのはダメです。
腹筋で腰が痛くなる人は、腰を反らす癖があります。可動域を大きく見せようとして、腰で稼ぎに行ってしまう。そうすると、鍛えたい場所ではないところが働いて、痛みだけが残ります。
70点の、その先
正直に言うと、キャットバックを続けるだけで腹筋は70点まで上がります。ただ、それ以上には進めません。
手で床を強く押しすぎると、肩甲骨だけが動く
手で床を「軽く押して」と言いましたが、これを強く押しすぎると、肩甲骨だけが動いて、背骨は動かなくなります。動画では実際に、強く押した時と胸椎を動かした時を並べて撮っているので、盛り上がり方の違いを見てもらえると思います。
強く押しても、背骨は動かない。ここが70点の壁です。
何が起きているかというと、肩甲骨と肋骨にくっついている「前鋸筋」という筋肉が関わってきます。キャットバックを極めるにも、腹筋を極めるにも、この筋肉が必要になります。この話は次回、詳しくやります。
両方が、両方を良くする
最後に、安心してほしいことがあります。
ここまで「キャットバックが腹筋の可動域を増やす」という話をしてきましたが、逆もあります。腹筋のトレーニングでも、胸椎の可動域は増えます。
つまり、両方が両方を良くする関係です。だからペアでやると効果が高い。ぜひやってみてください。
まとめ
腹筋が上に上がらないのは、腹筋が弱いからではなく、胸椎が動いていないだけ。胸椎の可動域を増やすために、キャットバックを1日5回。まずはそこからです。
最後に、私の動画も記事も全部そうなんですが、単語は覚えなくて大丈夫です。頚椎も胸椎も腰椎も、忘れてもらって構いません。「背骨が動くと腹筋が上がる」という雰囲気だけ、持ち帰ってください。
動画で見る(実技つき)
実際のキャットバックの動きと、強く押した時との比較映像は動画で見られます。
身体は筋肉ではなく、物理現象として読み解く。これが「運動的IQ」です。身体の使い方を、どの動画から見ても学べる運動の教科書を、数年かけて作っています。
体験・お問い合わせはトレーニングジム PUTTERS(栃木県小山市)まで。

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