「飲むだけで脂肪が燃える」。僕がL-カルニチンを買ったのも、その一文を見たからです。1年くらい飲んで、やめました。結論から言うと、一般の人には要りません。ただし「効かないから」ではなく、順番が違うからです。この記事では、カルニチンが体の中で何をしている物質なのかと、飲む価値がある人・ない人の線引きを書きます。元々は大学で骨折予防(脊椎の応力解析)を研究していた立場から、体を「イメージ」ではなく仕組みで解説します。
【この記事で分かること】
・カルニチンは何をしている物質か(脂肪を燃やす物質ではない)
・飲んでも筋肉にほとんど入らない理由
・L-カルニチンとアセチルL-カルニチンの違い
・買う前に、先にやることは何か
L-カルニチンは、10秒で走る人が9.9秒にするためのサプリ
お客さんによく、この例えで話します。
L-カルニチンは、100m走をすでに10秒で走れる人が、9.9秒にするために飲むもの。いちばん最後に来る、細かいテクニックです。
100m走に13秒かかる一般の人が、先にやるべきなのは走り方の見直しです。運動と、タンパク質。そこが整ってから、初めてサプリの出番が来ます。順番が逆になると、0.1秒を削るための道具で、1秒を削ろうとすることになる。道具が悪いのではなく、使う場所を間違えているだけです。
13秒の人は、まず何をすればいいですか?
3つだけです。①ミトコンドリア(燃やす工場)を増やす——これは週1の運動で増やせます。②タンパク質を足りている状態にする。③そもそも脂肪が「燃える」とは何かを知る——こちらは脂肪燃焼のメカニズムの記事に書きました。
この3つで、カルニチンより手前にある場所が全部埋まります。埋めないまま買うと、たぶん僕と同じ道をたどります。
カルニチンは「脂肪を燃やす」物質ではありません
カルニチンの仕事は、脂肪をミトコンドリア(燃やす工場)の中まで運び込むトラックです。トラック自体は、何も燃やしていません。
だから広告の理屈はこうなります。「トラックを増やせば、脂肪がどんどん工場に入る」。——でも、渋滞しているのはトラックではありません。足りていないのは工場の数の方です。トラックを10台増やしても、工場が1つしかなければ、荷物は工場の前に並ぶだけ。
飲めば、トラックは増えるんですか?
ほとんど増えません。理由が2つあります。
ひとつめ。筋肉のカルニチン置き場は、普通に食べていればすでにほぼ満タンです(体のカルニチンの大半は筋肉に貯まっています)。満タンのコップに水を注いでも、こぼれるだけ。飲んだぶんの多くは、そのまま尿に出ていきます。
ふたつめ。筋肉の入口には、鍵がかかっています。その鍵を開けるのがインスリン——糖質を食べた時に出るホルモンです。だから研究者が無理やり増やそうとした実験では、毎日ジュース1本ぶんくらいの糖質と一緒に、数ヶ月ずっと飲み続けて、やっと少し増えたという結果でした。
ダイエット目的の人が、空腹時にカルニチンだけ飲む。——鍵が閉まったままのドアの前に、荷物を置いている状態です。
カルニチンは、体の中で作れるって本当?
本当です。ここがいちばん大事かもしれません。
カルニチンは、肝臓と腎臓が、リジンとメチオニンという2つのアミノ酸から作っています。どちらも肉・魚・卵に入っている必須アミノ酸です(アミノ酸の種類の記事で、カルニチンを「そもそもアミノ酸ですらない」箱に入れたのは、これが理由。アミノ酸から作られた別の物質なんです)。
しかも腎臓が、尿から回収して再利用します。だから普通に食べている人が足りなくなることは、まずありません。肉をほとんど食べない人は血中の濃度が低めに出ますが、そのぶん自分で作る量が増えるので、不足の症状が出るわけではないと考えられています。
つまり僕がやっていたのは、自分で作れるものを、鍵の閉まったドアの前に、わざわざ買って置く作業でした。
僕は1年飲んで、やめました
正直に書きます。効いたかどうか、わかりませんでした。
覚えているのは、錠剤がとにかくデカくて、飲むのが苦痛だったことです。1日に飲む量も、もう覚えていません。
やめた理由は、効かなかったからというより——ミトコンドリアの方に行き着いたからです。トラックを買い足す話をしていたのに、増やすべきは工場の方だった。気づいたのは、飲み始めてから1年後でした。
ちなみに僕は、脂肪燃焼サプリを売る側にいたこともあります。その頃は本気で効くと思っていました。そちらはジムで売っていた僕が”盲信”していた話に書きました。
実物は、これです
どんなものか分からないと、話が始まらないと思うので置いておきます。ドラッグストアでもよく見るやつです。——見て、買わずに帰ってきてください。
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L-カルニチンとアセチルL-カルニチンの違い
棚に2種類あって迷った人へ。別々の目的で売られているものです。
L-カルニチン
標準の形。脂肪を筋肉のミトコンドリアへ運ぶ係。「脂肪燃焼」を掲げて売られているのは、ほぼこちら。粒が大きくなりがちなのも、こちらです。
アセチルL-カルニチン(ALCAR)
アセチル基が1個ついた形。脳の関門を通りやすいので、売り場が「脂肪燃焼」ではなく「記憶・集中・気分」の脳サプリ棚になります。ダイエット用ではありません。
ついでに、なぜ全部「L-」が付いているのか。鏡に映したような相方のD-カルニチンは、体で使えないどころか、じゃまをする側だからです。頭のLは、飾りではありません。
それでも、カルニチンが本当に足りなくなる人はいます
「要らない」とだけ書くと、これが抜け落ちるので書いておきます。
たとえば人工透析——腎臓の代わりに、機械で血液をきれいにする治療です。このときカルニチンも一緒に洗い流されてしまうので、補うことがあります。ほかに、生まれつきカルニチンを作れない・運べない体質の方や、一部の薬の影響で減る場合。
どれも病院で、医師が判断して使うものです。ドラッグストアで脂肪燃焼のために買う話とは、まったく別の棚だと思ってください。
【今日の結論】
・カルニチンは脂肪を燃やす物質ではなく、工場へ運ぶトラック
・足りないのはトラックではなく工場(ミトコンドリア)の数
・飲んでも筋肉には入りにくい(置き場は満タン+鍵はインスリン)
・そもそも体が自分で作れる(材料=リジンとメチオニン)
・10秒を9.9秒にする道具。13秒なら、先に走り方
・アセチルL-カルニチンは脂肪燃焼用ではなく脳向け
身体は「イメージ」ではなく、仕組みで考える
サプリを1つ覚えるより、「これは、どこに効く道具なのか」を自分で置ける方が強い。トラックか、工場か。0.1秒か、1秒か。この物差しがあると、棚の前で自分で決められます。これが「運動的IQ」です。あわせて、ミトコンドリアは週1で増やせると、疲れが抜けない人のコエンザイムQ10も読むと、エネルギーまわりは一周します。栃木県小山市のパーソナルジム PUTTERS では、機械や気合いに頼らず「自分で動いて、日常で使える体」を作る指導をしています。体験・ご相談はお気軽に。
▼ LINEで相談:https://lin.ee/xbGW2yf
※本記事は一般的な栄養・生化学の考え方と、筆者個人の体験・感想をまとめたものです。サプリの体感はすべて筆者1人の感想であり、効果を保証するものではありません。
※持病のある方・治療中の方・妊娠中の方は、サプリの利用について必ず主治医の指示に従ってください。透析や代謝性疾患に伴うカルニチンの補充は医療の範囲であり、自己判断で市販サプリに置き換えないでください。

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