結論から書きます。アルコールの分解を速めるサプリは、ありません。ウコンも、ヘパリーゼも、しじみも、飲めば早く酔いが醒めるという証拠はありません。これは商品の良し悪しではなく、体の仕組みの話です。そして、いちばん怖いのは効かないことではなく、「飲んだから大丈夫」と思って量が増えることのほうです。元々は大学で骨折予防(脊椎の応力解析)を研究していた立場から、体を「イメージ」ではなく仕組みで解説します。
【この記事で分かること】
・アルコールの分解を速める方法が無い理由(仕組みから)
・ウコン/ヘパリーゼ/L-システイン/オルニチンを1つずつ
・ウコンだけは「効く効かない」以前の注意があること
・日本人の約4割は、そもそも体質が違うという話
・それでも効く対策(サプリではありません)
分解しているのは、肝臓の酵素です
お酒を飲むと、アルコールはまずアセトアルデヒドという物質に変わります。これが顔を赤くしたり、頭を痛くしたり、気持ち悪くさせている犯人です。そこからさらに分解されて、最後は水と二酸化炭素になって出ていきます。
この2段階を担当しているのが、肝臓にある2つの酵素です。そして——

この酵素の量は、生まれつきほぼ決まっています。サプリを飲んでも増えません。だから処理速度も上がらない。体重や体調で多少ぶれますが、「速める」という選択肢はそもそも存在しないんです。
工場のラインが1本しかないのに、原料だけ増やしても意味がない。できるのは、原料を減らすこと(=飲む量)と、待つことだけです。
売られているものを、1つずつ見ます
ヘパリーゼ(肝臓水解物)はどうですか?
豚などの肝臓を分解して作ったエキスです。ヒトできちんと「分解が速くなった」ことを示した質の高いデータは、見当たりません。飲んだ後に元気な感じがするのは、糖分やカフェイン、ビタミン類が入っているぶんもあります。
L-システインは?
アセトアルデヒドとくっついて無害化する、という理屈です。理論としては筋が通っていて、二日酔いの症状が軽くなったという小さな研究もあります。ただし規模が小さく、決定的とは言えません。そして「症状が軽くなる」と「分解が速くなる」は別の話です。
オルニチン(しじみ)は?
これはそもそも経路が違います。オルニチンが関わるのはアンモニアを処理する回路で、アルコールの分解ラインとは別物です。オルニチンの記事にも書きましたが、そもそもタンパク質にすらならないアミノ酸です。「肝臓に良さそう」というイメージが、いつのまにか「二日酔いに効く」に横滑りしています。
DHM(ジヒドロミリセチン)は?
海外のサプリで人気です。ただし根拠はほとんど動物実験で、ヒトでの証拠は弱い。今のところ「期待の段階」です。
ウコンだけは、「効く効かない」以前の話があります
ここは他と分けて書きます。
ウコン(クルクミン)にも、アルコールの分解を速めるという確かな根拠はありません。そこは他と同じです。問題は別のところにあります。
日本では、ウコン製品による肝障害の報告が少なくありません。
健康食品による薬物性肝障害の原因として、ウコンは繰り返し名前が挙がっています。
とくに注意が要るのは、ウコンには鉄が多く含まれることです。肝臓に病気がある人は鉄が溜まりやすく、それが肝臓をさらに傷めることがあります。肝臓のために飲んだものが、肝臓の負担になる。ここが怖いところです。
健康な人がたまに1本飲んで、すぐどうこうなる話ではありません。ただ「肝臓に良いから毎日」は、やめたほうがいいです。肝機能に指摘を受けたことがある人は、なおさらです。
実物を置いておきます。買うなという話ではなく、何を買っているのかを知ったうえで選んでほしいという話です。
いちばん見かけるタイプ。分解が速くなる根拠はありません。たまに1本なら問題になりませんが、「肝臓のために毎日」はおすすめしません。※価格・内容量は販売店によって異なります。
この記事に出てくる成分が、ほぼ全部入っています。お守りとして飲むのは止めません。ただし「飲んだから多く飲める」にはなりません。※価格・内容量は販売店によって異なります。
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日本人の約4割は、そもそも体質が違います
ここが、この記事でいちばん知っておいてほしいところです。

アセトアルデヒドを分解する2つ目の酵素(ALDH2)の働きが弱い人が、日本人にはとても多い。飲むとすぐ赤くなる、動悸がする、気持ち悪くなる——あれです。これは慣れや根性ではなく、遺伝子の型です。
そして大事なのは、この体質の人が飲み続けると食道などのがんのリスクがはっきり上がることが分かっている点です。「飲んでいるうちに強くなった」人ほど、ここは注意が要ります。飲めるようになったことと、体が平気になったことは、まったく別だからです。
赤くなる人は、サプリでどうにかする対象ではありません。
量を減らすか、飲まないかの二択です。
「でも、これはどうなんですか」に答えます
ここまで書くと、だいたい3つ返ってきます。3つとも、実は当たっています。当たり方が違うだけです。
ウコンを飲むと、二日酔いが減る気がします
ウコン飲むと、二日酔い減ってる気がするんですけど。
効いてるのは、たぶんウコンじゃなくて一緒に入ってる水と糖分です。それで納得できるなら、飲むのはアリですよ。
気のせいと決めつけるつもりはありません。実際に楽になっている可能性はあります。ただ、あのドリンクには水分と糖分が入っています。そして次に書くとおり、二日酔いのつらさの正体は、かなりの部分が脱水と低血糖です。そこに当たっているぶん、体感は良くなります。
つまり「効いていない」のではなく、「効いている場所が思っているところと違う」。水とラムネでも、同じところには届きます。
ラムネがいいと聞きました
ラムネがいいって聞いたんですけど、あれは?
それ、けっこう当たってます。ただ効いてるのはブドウ糖で、分解が速くなるわけじゃないです。あと、ラムネのほうが安いですよ。
ラムネ菓子は、ほとんどがブドウ糖です。そして、ここが面白いところなんですが——
肝臓がアルコールを処理していると、肝臓の中で血糖を作る作業(糖新生)が邪魔されます。分解の過程で出てくる物質が増えて、材料を糖に戻す工程が止まってしまうんです。その結果、脳に届く燃料が減ります。飲んだ後や翌朝のあのだるさ、集中できない感じ、力が入らない感じ。あれの一部は、低血糖です。
だからブドウ糖を入れると、そこは埋まります。この記事に出てきた中で、いちばん理屈が通っていて、いちばん安い方法です。
ウコン1本より、水とラムネのほうが筋が通っています。
中身はほぼぶどう糖。分解が速くなるわけではありませんが、二日酔いのつらさの一部(低血糖)には当たっています。コンビニでもどこでも買えて、いちばん安い。※価格・入数は販売店によって異なります。
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ただし正直に書いておきます。「低血糖が二日酔いの一因である」という仕組みははっきりしていますが、「ブドウ糖を摂れば二日酔いが治る」という研究は、まだ十分ではありません。あくまで当たっている場所がある、という話です。そして分解そのものは、やっぱり速くなりません。
飲み続けていると強くなるし、空けると弱くなります
たくさん飲んでると強くなるし、しばらく空けてから飲むと弱くなってます。絶対に強くなってますよね?
なってます。ただ、増えてるのは”傷みながら処理する側のライン”なんですよ。
これは体感ではなく、実際に起きていることです。
さっき「酵素の量は遺伝でほぼ決まっている」と書きました。あれはメインの分解ラインの話です。実は、それとは別にもう1本、サブのラインがあります。普段はあまり働かないのですが、たくさん飲む習慣があると、この酵素が数倍に増えてきます。飲酒している人の肝臓を調べたら4〜10倍になっていた、という報告があります。
だから飲み続けると処理が速くなり、しばらく空けると減って元に戻る。体感どおりのことが、ちゃんと起きています。ただし、ここには続きがあります。
このサブのラインは、処理するときに活性酸素を出します。
「強くなる」は、肝臓が傷む方向とセットです。
強くなったというより、傷みながら処理できるようになったと言ったほうが近い。しかもこのサブのラインが担えるのは、肝臓全体の処理能力のうち1割ほどです。残りの「強くなった感じ」は、脳が酔いに慣れて、鈍くなっているぶんになります。
酔わなくなったのではなく、酔いに気づきにくくなって、そのぶん量が増える。お酒に強い人ほど肝臓を悪くしやすいのは、これが理由のひとつです。
じゃあ、何をすればいいのか
サプリではないものが、ちゃんとあります。
①量を先に決める。結局これがいちばん効きます。処理速度を上げられない以上、入れる量を減らす以外に手はありません。
②水を挟む。アルコールを流すためではなく、杯数が減るからです。ついでに脱水も防げます。
③食べてから飲む。胃にものがあると、酔いの立ち上がりが緩やかになります。
④寝る3時間前でやめる。深い睡眠が削られるのを防ぎます。
この4つは、筋トレ後のお酒は何時間空ける?の記事に詳しく書きました。そちらの結論も「効くのは時間より量」です。結局、同じところに戻ってきます。
【今日の結論】
・アルコールの分解を速めるサプリは無い(酵素の量は遺伝でほぼ決まっている)
・ヘパリーゼ・DHM=ヒトでの確かなデータは乏しい
・L-システイン=症状が軽くなる小さな研究はあるが、「分解が速くなる」とは別
・オルニチン=そもそも経路が違う
・ウコンは肝障害の報告があるので「毎日」はやめる(鉄が多い)
・日本人の約4割はALDH2が弱い体質=サプリの対象ではない
・効くのは①量を決める ②水を挟む ③食べてから飲む ④寝る3時間前でやめる
・ウコンで楽になるのは、水と糖分のぶん=効いている場所が違う
・ラムネ(ブドウ糖)は理屈が通っている=二日酔いの一部は低血糖。ただし分解は速くならない
・「飲み続けると強くなる」は本当に起きている。ただし増えるのは活性酸素を出しながら処理するサブのライン=傷む方向とセット
・いちばん怖いのは「飲んだから大丈夫」で量が増えること
身体は「イメージ」ではなく、仕組みで考える
「肝臓に良さそう」という言葉は、とても強い。強いから、中身を確かめないまま、毎日飲むところまで行ってしまいます。今回のウコンのように、それが逆に負担になることもある。何が、どこで、どう働くのか。そこを1回見ておくと、売り場でも飲み会でも迷わなくなります。これが「運動的IQ」です。栃木県小山市のパーソナルジム PUTTERS では、機械や気合いに頼らず「自分で動いて、日常で使える体」を作る指導をしています。体験・ご相談はお気軽に。
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※本記事は公開されている研究報告・製品情報をまとめたものです。診断・治療ではありません。
※20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。妊娠中・授乳中の方、服薬中の方は飲酒しないでください。
※肝機能に指摘を受けている方、治療中の方は、サプリメントの利用について必ず主治医に相談してください。
※健康食品による肝障害は誰にでも起こり得ます。飲み始めて体調に異変を感じたら中止し、医療機関を受診してください。

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