スクワットをやっても、もも裏に効いている感じがしない。しゃがむと腰が痛い。あるいは、腰ばかりが疲れる。
パーソナルトレーニングをしていると、この相談をよく受けます。そして皆さん、決まって同じことを聞きます。「どうやったら、もも裏に効かせられますか」と。
私からすると、そこではありません。効かせ方の問題ではなく、しゃがむ前の膝の角度で決まっています。
累計17,000セッションの指導をしてきましたが、スクワットは「しゃがみ方」ばかりが語られる種目です。ところが、もも裏に入るかどうかは、しゃがむ前にほぼ決着しています。
まず、その場で2つ試してください
読みながらできます。立てる場所ならどこでも大丈夫です。
ひとつ目。膝をまっすぐ伸ばしたまま立ちます。その状態で、お尻を上に上げてみてください。これがスクワットで使うお尻の形です。
いま、どうでしょうか。腰に力が入る感じはありませんか。あるいは、股関節の前が詰まる感じはないでしょうか。
ふたつ目。膝をちょっとだけ曲げます。1〜2cmで十分です。その状態で、もう一度お尻を上に持ち上げます。
さっきより、楽ではないでしょうか。
これだけで、何が変わったんですか?
もも裏が仕事をできる状態になりました。そのまま一度しゃがんでみてください。もも裏に効きませんか。
スタートのポジションを変えるだけで、スクワットは変わります。以下は、なぜそうなるのかの説明です。
骨盤の前傾と後傾は、引っ張り合いで決まる
「お尻を上げる」と言いましたが、これは骨盤の話です。
骨盤には前傾と後傾があります。骨盤が前に倒れるのが前傾、後ろに倒れるのが後傾。分かりやすさを優先して、お尻が上がっているのが前傾、お尻が下がっているのが後傾と覚えてください。
スクワットは前傾の姿勢でやります。つまり、お尻が上がった姿勢です。ところが、教わったとおりに前傾を作りに行くと、腰が反るんです。
骨盤の前傾って、どうやって作るんですか?
作りに行く前に、前傾と後傾がどうやって起きているのかを見てください。
筋肉の中に、骨盤を前に引っ張る筋肉と、後ろに引っ張る筋肉がいます。そして、勝ったほうに倒れる。それだけです。
引っ張っている筋肉は何種類もありますが、今日は2つだけで説明します。前傾させるのが腰、後傾させるのがもも裏です。
つまり「お尻を上げろ」と言われますが、お尻を上げている筋肉は腰なんです。
腰が120を出す前傾が、NGのほう
引っ張り合いなので、腰が勝てば前傾になります。
たとえば、腰が50、もも裏が100の力を出しているとします。もも裏が勝っているので、骨盤は後傾です。ここで腰が120を出せば、前傾になります。
これが、最初にやったひとつ目のパターンです。そして、これがNGです。
正解は、腰を強くすることではありません。もも裏の出力を下げればいい。
もも裏に力なんて入れていませんが?
そのとおりです。ここは勘違いしてほしくないところです。
膝をまっすぐ伸ばしている時、もも裏は全力の100で引っ張っています。ですが、あなたがもも裏に力を入れているわけではありません。人間の構造がそうなっているだけです。
自分では何もしていないのに邪魔をされている。だから「お尻の上げ方が分からない」という感覚になります。上げ方が下手なのではなく、上がらない姿勢でやらされていただけです。
では、どうやって下げるんですか?
膝を曲げるだけです。しかも1〜2cmで足ります。
そうすると、もも裏の出力が50くらいに下がります(分かりやすく言っているだけの数字です)。だから腰が120も頑張らなくていい。むしろ最初よりちょっと上げた80くらいで、前傾になります。
やることは、2つだけです
しれっと言いましたが、腰が120を出して前傾する、というのは構造的に可能です。できてしまいます。だから多くの人がそれをやっています。
ただ、100を超えて無理に力を入れ続けることが、腰痛の原因のひとつです。
やることをまとめます。
1. しゃがむ前に、膝をほんの少し曲げる(腰50・もも裏50)
2. その状態で、お尻を上に持ち上げる(腰80・もも裏50=前傾)
膝を曲げてから、お尻を上げる。この順番です。逆にやると詰まります。
膝は、何cm曲げればいいですか?
1〜2cmです。見た目にはほとんど分かりません。深く曲げる必要はなく、まっすぐのロックを外すのが目的だからです。
しゃがむと、もも裏がブレーキになる
腰が80、もも裏が50の状態でしゃがむと、どうなると思いますか。
引っ張り合いで前が勝っているので、そのまましゃがめば前に倒れます。だから、もも裏がブレーキをかけるしかないんです。
でも、もも裏は50しかありません。残りの30はどうするのか。ここで初めて、あなたが自分で力を出すことになります。
これが、スクワットがもも裏に入る仕組みです。そして、この30こそが筋トレです。
50は構造が勝手に出しているぶんで、タダで手に入ります。30だけが、自分の仕事です。
もも裏に効いているか、どうやって確かめますか?
効いている場所を見ればわかります。
スクワット中ずっともも裏に入っているというのは、骨盤が前傾のポジションだから、自分でもも裏に力を入れて後傾側に引っ張っているということです。つまり、前傾できている証拠です。
スクワットで腰が痛いのは、なぜですか
逆を言います。
スクワット中に腰が痛い人は、骨盤が最初から後傾のポジションだから、腰に力を入れて前傾に引っ張っている。つまり、100以内の力で前傾できていない。これが、腰が120の状態です。
120だの50だのと数字の話をしてきましたが、覚えなくて大丈夫です。効いている部位を考えれば、骨盤の位置が分かる。
結論として、スクワット中はもも裏に入り続けていればいい。これだけ覚えてください。
最後に、ひとつだけ注意点
しゃがんで上がる時、足を伸ばし切らないでください。
伸ばし切ると、構造的にもも裏の力が強くなるので、自分で力を出す必要がなくなります。つまり、もも裏の力が一瞬抜けます。慣れないうちは、膝を伸ばし切らないようにしましょう。
そもそも、もも裏の力の入れ方が分からないという方は、もも裏(ハムストリングス)は「伸ばす」より「支える」のほうを先に読んでください。今日の記事が「もも裏が働ける長さを作る話」で、あちらが「その長さのまま支える話」です。
骨盤の後傾そのものが分からないという方は、ヒップリフトがお尻に効かない本当の理由で、同じ骨盤の話を別の種目から書いています。
まとめ
スクワットでもも裏に効かないのは、効かせ方の問題ではありません。膝をまっすぐ伸ばしていると、もも裏は自分の意思と関係なく全力で引いていて、その状態で骨盤を前傾させようとすると腰が全力を超えて引くことになります。それが詰まりであり、腰の痛みです。
やることは2つ。膝を1〜2cm曲げて、それからお尻を上げる。順番が逆だと詰まります。あとはもも裏に入り続けているかだけを見てください。
最後に、私の動画も記事も全部そうなんですが、数字は覚えなくて大丈夫です。50も100も120も忘れてもらって構いません。「膝を伸ばしたままだと、もも裏が邪魔をしている」という雰囲気だけ、持ち帰ってください。
動画で見る(実技つき)
2つのパターンの実演、骨盤の前傾・後傾の図、引っ張り合いの数字の動き、通しのスクワットは動画で見られます。
身体は筋肉ではなく、物理現象として読み解く。これが「運動的IQ」です。身体の使い方を、どの動画から見ても学べる運動の教科書を、数年かけて作っています。
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