セッション中に、実際にお客さんから聞かれた質問です。
腹式呼吸ってお腹を膨らますってことは、腹圧もお腹を膨らますんだよね?
それが逆なんです。トレーニング中は、自分で膨らませません。吸えば横隔膜が落ちて勝手に膨らむので、やることは「吸うことと、逃さないこと」の2つだけです。
僕はストレッチポールの上でも、トレーニング中にも、同じ「お腹を膨らませて」を使っていました。この2つ、実は中身が逆です。同じ言葉を使っていたので、混ざっていた人がいると思います。ちょっと説明不足でした。今度きちんと動画にしますが、先に文字で書いておきます。
【この記事で分かること】
・ストレッチポールの「膨らませて」と、トレーニングの「膨らませて」の違い
・お腹の膨らみが「結果」でしかない理由
・膨らませに行くと、逆に腹圧が抜けること
・腹圧を入れるためにやることは、たった2つ
ストレッチポールのほうは、自分で膨らませる
ポールの上でやっているのは、自分の意思でお腹を動かす練習です。膨らませたり、へこませたり(ドローイン)してもらうやつ。
狙いは、自分のお腹の壁がどこにあるかを体で知ることです。壁の在処を知らない人が、その壁で押し返せるわけがない。だから先に、意思で動かせるかどうかを確かめてもらっています。ここでは膨らませに行って正解です。
もう一つ、ポールならではの狙いがあります。背骨がポールに乗ると肩甲骨が左右に落ちて、首や肩の力で吸えなくなる。胸で吸って逃げる道が物理的に塞がれるので、横隔膜を使うしかなくなります。言葉で「横隔膜で吸って」と教えるより、姿勢が勝手に正解を出させてくれる。だからポールを使っています。
この、横隔膜で動かす呼吸法を腹式呼吸と言います。
腹式呼吸って、お腹を膨らませることじゃないんですか?
違います。横隔膜で吸う呼吸のことですね。お腹が膨らむのは、そうなった結果です。
ポールの上で自分から膨らませてもらうのは、あくまで「壁を意思で動かせるか」を確かめるための練習であって、腹式呼吸の定義ではありません。
トレーニングのほうは、自分で膨らませない
こっちが説明不足だったところです。
スクワットなどで腹圧を入れる時、お腹は自分で膨らませるものではありません。順番はこうです。
- 息を吸う
- 肺に空気が入る
- 横隔膜が下に落ちる
- 落ちた横隔膜が、下の内臓を押す
- 結果としてお腹が膨らむ

お腹の膨らみは5番目に起きる結果です。目的でもやることでもなく、吸えば勝手にそうなる。
やることは2つだけです。吸うことと、逃さないこと。だから吸って呼吸を止めておくと、腹圧が勝手に入ります。「膨らませる」はどちらにも入っていません。

混ざると、逆に圧が抜ける
なぜ区別が要るのか。自分で膨らましに行くと、腹圧が下がるからです。
腹圧は、密閉した風船の中身を膨らましてる状態です。上が横隔膜、下が骨盤底、まわりのゴムがお腹と脇腹。中の圧が高いから風船が硬い状態です。
風船で例えましたが、人間の体だと「膨らませよう」としてお腹を前に出しに行くと、自分から腹圧を緩めることになります。横隔膜が同じだけ落ちても圧が上がらない。膨らませに行った瞬間に、圧を作る壁を自分で外しています。
さらに、膨らませに行く人はみぞおちが前に出て腰が反ります。腹圧を作るつもりで腰を反らせている。これが一番まずいパターンです(反り腰そのものについては反り腰が治らない理由の記事で書きました)。
いつか動画で絵を描いて説明します。
膨らませた方が、お腹が硬くなる気がするんですが?
硬くなっているのは、腹圧ではなく腰なんです。
お腹を前に出しに行くと、みぞおちが上がって腰が反ります。その反った腰の突っ張りを「支えている感じ」と勘違いしやすい。実際には風船のゴムを緩めているので、中の圧はむしろ下がっています。
言い方を変えます
これから僕は、場面で言い分けます。
ポールの上=お腹を「膨らませる」
自分でやる。壁の在処を知るための練習。
トレーニング=お腹が「膨らむ」
勝手にそうなる。やるのは吸って、止めるだけ。

日本語だと一文字しか違いませんが、やることは正反対です。
ただ、逆のことをやっているようで、この2つは上下の関係になっています。
ポールでやっているのは、横隔膜の使える幅を広げる作業です。ここは意識してやります。トレーニングでやっているのは、その広げた幅の中で、無意識に使うこと。吸えば、勝手に腹圧が入る。
片方が、もう片方の準備になっているということです。
ゴールは、考えなくても入っていること
最後に一つ。
腹圧は「毎回きちんと意識して固めるもの」ではありません。ゴールは、重いものを持つ瞬間に考える前に勝手に入っている状態です。体は本来、動き出す前に先読みして支えを作ります。その働きが眠っている人に、一時的に意識で肩代わりしてもらっているだけです。
僕は例えば「これ20kgぐらいの重さだから、20kg持ち上げる分の腹圧を使おう」みたいに腹圧を入れます。
入るか入らないかは、もう考えていません。考えているのは「どれくらい入れるか」のほうです。
だから「膨らませる」という余計な操作を一個減らしたい。操作が減るほど、無意識に近づきます。
考えることを増やして上手くなるのではなく、考えなくてよくすることが上手くなるということです。
【今日の結論】
・ポールの上=お腹を膨らませる(自分でやる/壁の在処を知る練習)
・トレーニング=お腹が膨らむ(吸えば勝手にそうなる)
・膨らみは5番目に起きる結果。目的でもやることでもない
・やることは2つだけ=吸うことと、逃さないこと
・吸って呼吸を止めておくと、腹圧は勝手に入る
・膨らませに行くと逆に圧が抜ける(自分でゴムを緩めている/腰が反る)
・ポール=横隔膜の幅を広げる/トレーニング=その幅の中で無意識に使う
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身体は「イメージ」ではなく、仕組みで考える
同じ言葉でも、場面が変われば中身が変わります。だから「言われた通りにやる」だけだと、いつか噛み合わなくなる。その動作が何のためにあるのかが分かっていれば、言葉が同じでも自分で切り替えられます。これが「運動的IQ」です。道具と体の関係についてはピラティスのリフォーマーを置かない理由にも書きました。栃木県小山市のパーソナルジム PUTTERS では、気合いや道具に頼らず「自分で動いて、日常で使える体」を作る指導をしています。体験・ご相談はお気軽に。
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※運動の効果には個人差があります。息を止めて腹圧をかけると血圧が上がります。高血圧・心疾患のある方、妊娠中の方は、息を止めずに行うか、必ず主治医の指示に従ってください。痛みのある方・治療中の方も同様です。

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