左右別々にやる種目で、片方だけ「なんか違う」と感じる。右はうまくできるのに、左はしっくりこない。
パーソナルトレーニングの現場で、いちばんよく聞かれる質問のひとつです。そして、ほとんどの方が「左の筋肉が弱いから」だと考えています。
これは半分正解で、半分違います。結論から言うと、筋肉が弱いから左右差が出るのではありません。左右差を放っておくから、片方が弱くなります。順番が逆なんです。
まず、確かめてみてください
ブルガリアンスクワットで説明します。読みながらできます。
左足をベンチ台に乗せて、右足が前です。ベンチ台がなければ椅子でも大丈夫です。ちょっとしゃがんで、お尻を上に突き出します。右の腿裏に伸び感はありますか。
そこでやめて、逆の足も同じようにやってみてください。
どうでしたか。感じ方に違いがありませんでしたか。

まだ1回も上げていないのに、左右差が分かるんですか?
分かります。ポジションが取りやすい方が、効きやすい方で、成長しやすい方です。17,000セッションで色々な方を見てきましたが、ほとんどの人に当てはまります。
「弱い方の筋肉を鍛える」が半分違う理由
ここからは、左がやりにくい人の話で進めます。
やりにくい方も、10回は上がります。ただ、終わったあとの「やった感」が少ないはずです。
上がるのに効かないのは、なぜですか?
前ももなど、別の筋肉が代わりに上げているからです。腿裏の出番が減っているだけで、動作そのものは成立してしまいます。

ここまで読むと、「やっぱり左の腿裏が弱いんじゃないか」と思いますよね。半分違う理由を説明する前に、1個だけ知っておく仕組みがあります。
止まっている時にも、筋肉は力を出しています
さっき、ブルガリアンスクワットのポジションで止まって「伸び感はありますか」と聞きました。あの止まっている時の腿裏の状態には、名前があります。
等尺性収縮といいます。難しい言葉ですが、ここだけ覚えてもらえれば大丈夫です。
ざっくり言うと、筋肉の長さを変えずに、力を出すことです。
筋トレは、伸ばして縮めるものではないんですか?
それも合っています。力こぶを作ってみてください。力が入っている感じがしますよね。これは筋肉が縮んで力を出している状態です。
そのまま3秒止めてみてください。今、筋肉は動いていないのに、力を出しています。これが等尺性収縮です。

そこから少し腕を伸ばして、また3秒止めてみましょう。筋肉を硬くできる人と、できない人がいるはずです。
つまりどの角度でも、等尺性収縮はできます。できなかった人は、その角度で力を出す練習をしてこなかっただけです。練習すればできるようになります。
左右差の正体は、支えるのが下手なだけ
話を戻します。ブルガリアンスクワットの左右差は、腿裏の等尺性収縮の差です。
簡単に言えば、片方の腿裏を固めるのが下手。それだけです。弱いのではありません。
下手なままトレーニングを続けると、片方だけが成長して、片方は成長しない。だから最終的に「弱い」という結果になります。弱さは原因ではなく、結果です。
整体に行けば、左右差はなくなりますか?
「整体に行って左右差がなくなりました」とよく言われます。ただ、そこで変わったのは感じ方だけです。
等尺性収縮が身についたわけではないので、左右差は元に戻ることが多いです。左右差は受け入れて、左右差のある状態で、少しずつ自分で直していくしかありません。
ジムでの直し方は、3つです
1. 下手な方から先にやる
左が苦手なら、左から始めます。後半にやると疲れている分、もっとやりにくくなるからです。
2. 重さは下手な方に合わせる
もったいなく感じますよね。上手な方は少し楽になります。
それでも、上手な方に合わせた重さでやると、下手な方は「逃がし方」を覚えます。脳は良い動きだけでなく、悪い動きも覚えます。逃がし方を覚えるということは、左右差が広がるということです。

3. 上と下で1秒止める
これが一番大切です。しゃがんでいって、下でいちばん辛い瞬間に1秒止める。上がっていって、上でも1秒止める。
これが等尺性収縮を上手にするやり方です。腿裏に限らず、全部の筋トレに当てはまります。
そもそも、左右差はジムの外で作られています
いったん冷静に考えてほしいことがあります。等尺性収縮は、少年漫画の必殺技のように「習得する」ものでしょうか。
うちには生後10ヶ月の子どもがいます。先週、立てるようになりました。立って転んで、また立って、を繰り返して、10秒ほど立っていられます。
これが、立つための等尺性収縮を覚えた瞬間です。必殺技ではありません。みんな赤ちゃんの時に、一度覚えています。
赤ちゃんに左右差はないんですか?
うちの子を見ていても、立ち方の左右差はほとんどありません。まだ立った量が、ほとんどないからです。

つまり左右差が生まれる原因は、日常の過ごし方、もっと言えば重心の掛け方です。量に比例するので、年齢を重ねるほど左右差は広がります。
ジムに通っていれば、上書きできますか?
週に1時間ジムに行くとします。1週間は168時間なので、残りは167時間です。はっきり言うと、ジムの1時間だけで上書きするのは難しいです。
だから役割分担で考えてください。ジムでは等尺性収縮を思い出す。日常では、ちゃんと支える練習をする。これが近道です。
167時間の方で、やることはひとつだけ
ぼーっとしている時に、片足へ重心をかけていることがありますよね。それが左右差を作っています。
やることはひとつです。気がついたら、両足に戻す。何秒とか考えなくて構いません。「右重心だな」と気づいたら、両足に乗せ直す。それだけです。
強いて言うなら、腿裏に体重が乗っている感覚を覚えてほしいです。その感覚が分からない人は、さっきのジムのやり方で覚えてください。
まとめ
最後に、途中でしれっと話しましたが、全部の筋肉に等尺性収縮があります。私のジムでは、その収縮を覚えることが筋トレのスタートラインだと伝えています。
過去の解説でも、難しい言葉を使わずにこの話をしてきました。スクワットで前ももばかり疲れる本当の理由で書いた「腿裏は伸ばすより支える」も、同じ話です。
左右差は、焦って直すものではありません。ゆっくり頑張っていきましょう。
動画で見る(実技つき)
ブルガリアンスクワットの実技、力こぶで等尺性収縮を確かめる方法、上と下で止めるやり方は動画で見られます。
身体は筋肉ではなく、物理現象として読み解く。これが「運動的IQ」です。身体の使い方を、どの動画から見ても学べる運動の教科書を、数年かけて作っています。
体験・お問い合わせはトレーニングジム PUTTERS(栃木県小山市)まで。

コメント
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[…] 同じように「効かせる場所が思っている場所と違う」話は、筋トレの左右差は、筋肉が弱いからじゃないでも書いています。 […]