夏目漱石の『こころ』に、有名な台詞があります。「精神的に向上心のないものは、馬鹿だ」。学生時代に読んで、今でも忘れられない一文です。
この言葉、なんだかカッコよく聞こえますよね。向上心を持て、立ち止まるな、と。実際、頷く人は多いと思います。でも私は——正直、素直には頷けません。
というのも、『こころ』の中でこの言葉は、人を追い詰める刃として出てきます。はじめは友人を叱るための言葉だった。それがめぐりめぐって、最後には同じ言葉が本人に返ってきて、その人自身を苦しめていくんです。
つまり向上心って、他人にも、そして自分にも刺さる刃なんです。前に進む力であると同時に、使いようを間違えると、自分を切ってしまう。
これ、筋トレにもそのまま当てはまると思っています。
もちろん、向上心は大事です。変わりたい、という気持ちがないと、そもそも何も始まらない。そこは間違いなく入口です。
でも、向上心が強すぎる人ほど、実は続かない。もっと、もっと、と自分を追い込んで、できない日の自分を責めて——ある日ぷつっと、来なくなる。私はそういう人を、何人も見てきました。
だから私は、向上心も、ホドホドがいいと思っています。ゼロでいいわけじゃない。でも、振り切らなくていい。
前にも書きましたが、筋トレは長期投資です。頑張りすぎなくていいから、細く長く。今日できなかった自分を責めるくらいなら、明日また1からやればいい。その方が、ずっといいです。
向上心という刃で、自分を切らないように。私が高校の頃に好きだった言葉で締めます。——過ぎたるは猶及ばざるが如し。ちょうどよく、長く。それくらいが、たぶん一番遠くまで行けます。
これは、栃木県小山市のパーソナルジム PUTTERS の松本の”独り言”です。体のこと・トレーニングのことは、LINEからお気軽にどうぞ。

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