反り腰と言われて、お尻を鍛えてみた。ストレッチもしてみた。でも戻る——そんな人へ。じつは反り腰は「腰が悪い」のでも「お尻が弱い」のでもなく、骨盤を支える筋肉が支えていないだけかもしれません。元々は大学で腰の骨の骨折予防(脊椎の応力解析)を研究していた立場から、体を「筋肉」ではなく「力の流れ」で正直に解説します。名前は覚えなくて大丈夫です。
反り腰なので、お尻を鍛えた方がいいって言われました。やってるんですけど、あんまり変わらなくて…
それ、半分は正解です。ただ反り腰は「腰が反ってる」ので、お尻で骨盤を下げても腰の反りは戻らないんですよ。
・反り腰と言われて、改善したい
・腰が反って、普段から腰が痛い
・仰向けで寝るのが辛い
・しゃがむと股関節の前が詰まる感じがする
一個でも思い当たったら、骨盤を支える筋肉が、骨盤を支えていないサインです。先に結論を言うと、必要なのはお尻を強くすることでも、前ももを伸ばすことでもなく、腸腰筋で骨盤を静かに支えること。ここが分かると、「鍛えれば治るはず」で遠回りするのを防げます。
【この記事で分かる事】
・骨盤の正しい位置(じつは「まっすぐ」ではない)
・反り腰と骨盤前傾が”別物”である理由
・お尻を鍛えるのが半分正解で、半分足りない理由
・今日からできる、骨盤を支える練習
骨盤の正しい位置は、まっすぐではなく「ちょっと前傾」
よくお客さんに聞かれます。「骨盤の正しい位置ってどこですか?」。答えはちょっと前傾です。まっすぐでも、後ろでもありません。ここが最初のつまずきポイントで、「骨盤はまっすぐが正しい」と思っている人がとても多いです。
前傾と後傾って、どう違うんですか?
骨盤には前傾と後傾があります。前に倒れるのが前傾、後ろに倒れるのが後傾。少し難しいので、現場ではもっとざっくり言っています。お尻が上がっているのが前傾、下がっているのが後傾。この言い方の方が、自分の体で確かめやすいです。
反り腰と骨盤前傾は、見た目が似ているだけの別物
ここが今日いちばん大事なところです。正しい姿勢は「ちょっと前傾」で、前傾は「お尻が上がっている」。ということは——反り腰の人もお尻が上がって見えるので、正しい姿勢に見えてしまうんです。でも、この2つは別物です。
整理すると、こうです。骨盤の前傾は、骨盤そのものが前に倒れている状態。反り腰は、骨盤の傾きに関係なく、腰が反っている状態。見た目が似ているせいで、同じものとして語られがちですが、動いている場所が違います。
自分がどっちなのか、分かりません
それが普通です。反り腰は腰の角度で言えば数十パターン、ざっくり分けても5パターンくらいあります。一つずつ解説すると、それだけでとても難しい話になりますし、何より自分がどのパターンかを判定してから直しにいくのは、めちゃくちゃ遠回りです。分類は覚えなくて大丈夫。共通点が一個だけあるので、そこだけ押さえます。
「お尻を鍛えましょう」が半分正解な理由
反り腰の改善でいちばんよく言われるのが「お尻を鍛えましょう」です。これは半分正解。というのも、骨盤を下げる(後傾させる)のは、たしかにお尻の仕事だからです。間違ってはいません。
ただ、さっきの話とつなげると分かります。反り腰は腰で反っている。だから骨盤を後傾させても、腰の反りそのものは戻らないんです。お尻を鍛えても変わらなかった人は、努力が足りなかったのではなく、動かす場所が一個ずれていただけです。
全部に共通するのは一個だけ|骨盤を支える筋肉が、支えていない
パターンが何十通りあっても、共通していることが一個あります。それは骨盤を支える筋肉が、骨盤を支えていないこと。もっと言うと、支える役の筋肉が仕事をしていないから、代わりに腰が頑張ってしまっている。反り腰は、腰のせいというより「腰が頑張らされている結果」です。
その筋肉が「腸腰筋」です
名前は覚えなくて大丈夫ですが、位置だけ見ておいてください。腸腰筋は、背骨と骨盤の内側から、骨盤の前を通って太ももの付け根につく筋肉です。骨盤をまたいでいるので、ここが働くと骨盤が安定します。逆にここが抜けると、支える仕事が腰に回ります。
やり方|膝つきランジで、骨盤を1〜2cmスライドさせる
では、どうやって支える感覚を作るか。やってほしいのは、これ一個だけです。
【膝つきランジで骨盤スライド】
① 膝立ちから、片足を前に出す(例:右足が前、左足が後ろ)
② 後ろ側(左)のお尻に、軽く力を入れる。ちょっと固くなる程度でOK。これで腰がまっすぐになります
③ そのまま骨盤を、軽く前にスライドさせる
④ 後ろ側の足の付け根に、ちょっと伸び感が出れば正解
⑤ 後ろ足で前に伸ばして、後ろ足で戻る。左右5回ずつ
動かす量は、1〜2cmで大丈夫です。現場でもそう伝えていて、そのイメージだとできる人が多いです。気持ちいいところまで伸ばしにいかないでください。
やってはいけないことは?
2つあります。1つ目は腰を反らして、足の付け根を伸ばしにいくこと。伸びた感じはするのですが、やりたいことと真逆で、最悪悪化します。腰は絶対に反らさないでください。2つ目は力いっぱい伸ばしにいくこと。この種目、見た目はストレッチですが、やっていることは違います。伸ばす種目ではなく、支える練習です。
前ももが攣りそうになるんですが
よくあります。原因ははっきりしていて、お尻に力が入っていない時に前ももが頑張ります。付け根ではなく前ももが伸びる感じの人は、後ろの膝の位置を変えると直りやすいです。あと、膝の一点が痛い人は、単純に膝の骨が床に当たっているだけなので、厚めのマットかタオルを敷けば解決します。
なぜ、お尻に力を入れるのか|種明かし
お尻に力を入れた時点で、股関節の付け根が伸びませんでしたか。この伸び感が、腸腰筋で股関節を支えている状態です。その支えた上で1〜2cm動かせるようにすることが、骨盤の改善になります。
「じゃあ、お尻のトレーニングじゃないの?」と思いますよね。理由があります。腸腰筋は、力を入れようと思って入れるのが難しい筋肉なんです。だから、お尻で腰を止めて、腸腰筋が支えるしかない状況を作っている。狙って入れられない筋肉は、入らざるを得ない状況を作るのが早いです。
骨盤は、お尻と腸腰筋の両方で支えると安定する
ここまで読むと分かると思いますが、お尻のトレーニングも必須です。半分正解、というのはそういう意味でした。骨盤は前後から挟まれて安定するので、お尻と腸腰筋の両方が要ります。厳密には2つの筋肉だけではありませんが、まずこの2つができるようになると、姿勢は変わってきます。
お尻を「強く鍛える」のではなく「優しく支える側で使う」話は、腰痛とお尻(中臀筋)の記事でも触れています。支える働きが抜けると、しわ寄せは腰に来ます。
強く使うトレーニングと、静かに支えるトレーニングは別物
腸腰筋には、もっと動きのあるトレーニングがたくさんあります。そもそも腸腰筋はしっかり可動域を取れる筋肉で、サッカーやバスケの方向転換、陸上の脚を引き上げる動作、ボールを強く蹴る動作に関わります。瞬発性が必要なスポーツをしている人は、強くするトレーニングも大切です。
ただ、姿勢の改善という点では、強くしても治らないし、柔らかく伸ばしても治りません。同じ筋肉でも「強い力を出す」と「優しい力で支える」はまったく別のトレーニングだからです。もも裏でも同じことが起きていて、そちらはもも裏は「伸ばす」より「支える」の記事にまとめています。
重量が上がるからこそ、怪我をする
最後にもう一つだけ。この「静かに支える力」は、姿勢だけの話ではありません。スクワットなどのウエイトトレーニングでも必要です。
支える力を無視して、腰や腸腰筋に過剰に力を入れると、皮肉なことに重量は上がります。そして上がるからこそ「これで正しい」と思い込んでしまう。腰が耐えられない重量になった時に、怪我をする。そういう人を、現場でたくさん見てきました。この記事を読んでくれた方には、怪我をしてほしくないです。姿勢を良くしたい人にも、体を鍛えたい人にも必須の力だと思っています。
【今日の結論】
・骨盤の正しい位置は「ちょっと前傾」=お尻が上がっている状態
・骨盤の前傾と反り腰は別物。反り腰は傾きに関係なく腰が反っている
・「お尻を鍛える」は半分正解。後傾はお尻の仕事だが、腰の反りは戻らない
・共通点は一個=骨盤を支える筋肉(腸腰筋)が支えていない
・膝つきランジで骨盤を1〜2cmスライド。1日、左右5回でいい
姿勢の改善は地味です。筋肉痛も来ないし、やった感もない。だからこそ、1日左右5回で十分ですし、怪我防止のためにトレーニング前にやるのもおすすめです。実際の動きと、よくあるエラーの直し方は、自分の体で真似できる実技つきで動画にまとめました。
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身体は「筋肉」ではなく、物理現象として読み解く
これが「運動的IQ」です。どの動画・記事から見ても学べる”運動の教科書”を、数年かけて作っています。栃木県小山市のパーソナルジム PUTTERS では、機械や気合いに頼らず「自分で動いて、日常で使える体」を作る指導をしています。体験・ご相談はお気軽に。
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※腰の痛みや反り腰の原因は人によって異なります。強い痛み・しびれ・脱力がある方、妊娠中の方、通院中の方は、自己判断で伸ばす・鍛える前に医師にご相談ください。この記事は特定の診断・治療を保証するものではありません。






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