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前ももが張る。マッサージガンを当てたり、ローラーでゴリゴリやると、その場では軽くなる。ところが次の日には、また元どおり硬くなっている。
パーソナルトレーニングをしていると、この相談をよく受けます。そして皆さん、決まって同じことを聞きます。「リリースのやり方が間違っているんですか」と。
そうではありません。やり方の問題でも、回数が足りないわけでもなく、張りを作っている理由の方がまだ残っているだけです。
累計17,000セッションの中で、前ももの張りは一番よく出てくる悩みです。そして、ほぐす場所と、鍛える場所は別だというのが今日の話です。
まず、前ももを触ってください
読みながらできます。座れる場所ならどこでも大丈夫です。
足を前に伸ばして、少しだけ膝を曲げます。その状態で、前ももの真ん中あたりを指で押してみてください。
痛い人、痛くない人、何も感じない人がいると思います。それで構いません。
次に、その指を外側にずらします。太ももの外側です。同じ強さで押してみてください。
さっきより硬くないですか?
だいたいの人は、真ん中より外側の方が痛い、もしくは硬いはずです。
もうひとつ試してください。外側に指を置いたまま、緩めていた膝を伸ばし切ります。筋肉が動くのが分かると思います。ですが、押した時の硬さ自体は、そんなに変わらないはずです。
ここが今日の入口です。あなたが「前ももの張り」だと思って触っているものは、実は筋肉ではありません。
外側の硬さは、筋肉ではありません
前ももの筋肉は、大腿四頭筋といいます。名前のとおり、4つの筋肉でできています。大腿直筋、内側広筋、中間広筋、そして外側広筋。さっき触った外側にあるのが外側広筋で、これも前ももの一部です。

外ももっていう筋肉はないんですか?
よく聞かれます。前ももがあって、内ももがあって、後ろももがある。じゃあ外ももは、と。
ありません。外ももという筋肉のグループは存在しないんです。外側にあるのは、さっき触ってもらった前ももの一部(外側広筋)と、その表面にある靭帯だけです。
靭帯というのが分かりにくければ、膝のお皿の下を触ってみてください。硬い筋のようなものがあると思います。大雑把に言うと、あれが靭帯です。

つまり、さっき外側を押して感じた硬さは、筋肉の硬さではなく靭帯の硬さです。筋肉ではないものを、いくらほぐそうとしているのか、という話になります。
筋膜リリースで治りますか?
ここで、いちばん多い質問に答えます。前ももの外側が張るから、筋膜リリースや整体で治りますか、と。
答えはNOです。
分かりやすく数字にします。0から100のうち、今あなたが前ももに感じている張りを80としましょう。
筋膜リリースがやっているのは、この80を40くらいに下げることです。張りというのは、そもそも体が力を出し続けている状態のことなので、80が40に下がれば力が抜けます。だから体は軽くなります。ここは本当に効いています。
そして次の日には、80に戻ります。これが、17,000セッションの現場で見てきた感覚です。
なぜ、次の日に戻るんですか?
答えは、最初の「80」そのものにあります。
何もしていないのに張りが80あるということは、80の張りを作り続けている何かが、体の中にいるということです。リリースはその場の数値を下げますが、作っている側には触れていません。だから、放っておけば元に戻ります。
むくみが取れて細く見えることはあります。ですが、根本は何も変わっていません。
張らせているのは、お尻の横です
さっき触ってもらった靭帯には、名前があります。腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)といいます。
腸脛靭帯って、前ももの一部じゃないんですか?
そう思いますよね。ですが、元をたどると骨盤についています。そして骨盤側で、ある筋肉とくっついています。
それが中臀筋。お尻の横にある筋肉です。

腸脛靭帯が張っている理由は、ひとことで言うと仕事のしすぎです。中臀筋がやるはずの仕事を、靭帯が肩代わりしている。2人分の仕事を1人でやっているので、張ります。

そして靭帯が張ると、その下にある前ももが上から押さえつけられます。これが「前ももが張っている」という感覚の正体です。
だから、やることは前ももをほぐすことではありません。お尻の横に、仕事を返すことです。
お尻に仕事を返す(中臀筋のトレーニング)
種目はひとつだけです。
立った状態で、壁でも何でもいいので掴みます。片足で立って、浮いている方の足を真横に上げます。上げている方のお尻の横に効いていれば正解です。床についている方のお尻に効いても、今は大丈夫です。
反動はつけません。ゆっくり上げて、ゆっくり下げる。負荷が抜けない範囲で10回くらいで十分です。
やってみたけど、お尻に効きません
そういう人がほとんどです。ここで、ようやく筋膜リリースの出番になります。
足を横に上げるという動作を100だとします。今のあなたは、そのうち80を前ももで上げている状態です。だとすると、お尻は残りの20しか使えません。意識しようとしても、意識できる余地がないんです。
ここで先に筋膜リリースをして、前ももを80から40に落とします。すると、足を横に上げるためにはお尻が60で働くしかなくなります。
60で動かせば、さっきの20よりはるかに「効いた感じ」が出ます。これが、リリースを先にやる理由です。
配分は、こうやって戻していく
ただし、筋膜リリースの効果はその日だけです。翌日には戻ります。
ですが、その日のトレーニングで中臀筋が少し強くなったとしたらどうでしょうか。次のトレーニングの時には、中臀筋が30、前ももが70になっています。

リリースをして、トレーニングをする。これを繰り返して、地道に本来の配分に戻していくのが正解です。
逆に、お尻を鍛えずにリリースだけをやると、次の日に80に戻るだけです。同じことを毎日繰り返すことになります。
順番はどっちが先ですか?
リリースをしてから、横に上げる。この順番だけは間違えないでください。逆にやると、鍛えている間ずっと前ももが80のままなので、お尻には入りません。
筋膜リリースのやり方
当てる場所は、さっき指で押した太ももの外側です。ストレッチポールを使って、20秒くらい優しく当ててください。強く体重をかける必要はありません。
やった後にもう一度触ってみると、さっきより柔らかくなっているはずです。それが張りの下がった状態です。ただし、明日には戻ります。
ちなみに、自分の指でやっても効いた感じは少ないです。この理由は動画1本分の話になるので、また別で解説します。
会社で言うと、有給消化です
筋膜リリースを、私は会社の有給にたとえています。
仕事を頑張りすぎている腸脛靭帯に「休んでいいよ」と有給を取らせると、その人は楽になります。ですが、誰にも仕事を振っていなければ、休んだ分の仕事はそのまま残っています。これが、リリースだけをやった場合です。
有給を取らせるのと一緒に、仕事を中臀筋に振っておく。そうすれば、休み明けには仕事そのものが減っているし、中臀筋も仕事を覚えて一人前になっています。これが、リリースの後にトレーニングをする話です。
まとめ
前ももが張るのは、前ももを使いすぎているからではありません。触って硬いのは真ん中ではなく外側で、その外側の硬さは筋肉ではなく腸脛靭帯です。その靭帯は、お尻の横の中臀筋がやるはずの仕事を肩代わりしているので張ります。
やることは2つ。外側にポールを当ててから、足を真横に上げる。この順番です。リリースだけでは次の日に戻ります。
数字は覚えなくて大丈夫です。「揉んでも戻るのは、揉む場所と鍛える場所が別だから」という雰囲気だけ、持ち帰ってください。
お尻の使い方そのものが分からないという方は、ヒップリフトがお尻に効かない本当の理由を先に読んでください。あちらはお尻の後ろ側(大臀筋)、今日は横側(中臀筋)の話です。
前ももに力が逃げてしまう感覚がある方は、もも裏(ハムストリングス)は「伸ばす」より「支える」も合わせてどうぞ。
動画で見る(実技つき)
触診のやり方、解剖図での中臀筋と腸脛靭帯のつながり、中臀筋のトレーニング、ポールの当て方は動画で見られます。
身体は筋肉ではなく、物理現象として読み解く。これが「運動的IQ」です。身体の使い方を、どの動画から見ても学べる運動の教科書を、数年かけて作っています。
体験・お問い合わせはトレーニングジム PUTTERS(栃木県小山市)まで。

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