家の壁に、ヤモリがぺたっと張り付いているの、見たことありますか。つるつるの壁も、なんなら天井も、逆さまで平気で歩く。吸盤もない、ネバネバもないのに。なんでだと思いますか。
答えは、「めちゃくちゃ弱い力を、とんでもない数、束ねているから」です。
ヤモリの足の裏には、細かい毛がびっしり生えていて、その毛の先は、さらに細かく枝分かれしています。壁に触れている点を全部数えると、なんと数十億。ひとつひとつは、指で払えば消えるくらい、弱い力です。
でも、その弱い力が数十億も集まると——自分の体重ごと、天井にぶら下がれる。弱くても、数で勝つ。
しかもヤモリがこれをできるのは、体が軽いからでもあります。支える相手が軽ければ、弱い力で足りる。人間が同じことをできないのは、単純に、重すぎるからです。
——これ、あなたの体でも、同じことが起きています。
「体を支える」と聞くと、力こぶみたいな、強くて目立つ筋肉を思い浮かべますよね。でも、あなたを今まっすぐ立たせているのは、そういう“強い筋肉”だけではないんです。
体の奥のほうに、小さくて、地味で、一個ずつは弱い筋肉が、たくさんあります。お腹の奥、背骨のきわ、関節のまわり。ひとつひとつは、ヤモリの毛みたいに弱い。でも、それが束になって、静かに、あなたを立たせている。
そして、その奥の筋肉は、重いものを持ち上げるためにあるんじゃない。“あなた自身”を、静かに支えるためにあります。支える相手は、重いバーベルじゃなくて、あなた自身。だから——力まなくていいんです。
力強く握りしめる力(筋力)と、静かに支える力(機能)は、別ものなんです。ヤモリは、握ってません。弱い力を、束で、静かに効かせているだけ。あなたの体の芯も、それと同じ。
だから、トレーニングで大事なのは、「強く固めること」だけじゃない。地味で、弱くて、目立たない支えを、コツコツ束にしていくこと。一回で強くはなりません。でも、細く、長く積めば、ある日ちゃんと、あなたを支える束になります。
——ちなみに、この「弱いのに、束で支える力」。私が子どもの頃から大好きな、“原子と分子”の話なんです。科学の言葉では、ファンデルワールス力といいます。覚えなくて大丈夫。弱くていい。地味でいい。束で、長く。 ヤモリが、涼しい顔で天井を歩くみたいに。
これは、栃木県小山市のパーソナルジム PUTTERS の松本の”独り言”です。体のこと・トレーニングのことは、LINEからお気軽にどうぞ。

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