揉んでもらった直後は楽になるのに、次の日にはもう戻っている。マッサージも整体も、行った日はいいけれど、1週間後には同じ。
パーソナルトレーニングの現場で、いちばんよく聞く悩みのひとつです。そして多くの方が「筋肉が弱いから、こるんだろう」と考えています。
そこが違います。結論から言うと、肩こりが治らないのは、自分で張りをコントロールできていないからです。そして力を抜けるようになるには、先に自分で力を入れる練習が要ります。
肩こりの正体は、肩甲挙筋の張りです
肩甲骨と首をつないでいる「肩甲挙筋」という筋肉があります。肩こりは、この筋肉が張っている状態です。
よく言われる対策は、「肩甲挙筋に仕事がいきすぎているから、周りの筋肉に仕事を返して休ませましょう」というものです。これは正解です。周りが働けば、肩甲挙筋の負担は確かに減ります。
仕事を減らせば、肩こりは治りますか?
治る人もいます。でも、それでも治らない人がいます。仕事が減っても、張ったままだからです。
ここを理解するために、知っておいてほしい体の仕組みがあります。
張っている筋肉は、休んでいません
張っている筋肉は、力を抜いてサボっているわけではありません。力を出し続けている状態です。関節を動かさずに力を出し続けることを、等尺性収縮と言います。
だから、揉むと楽になります。揉むというのは、筋肉が出している力を一時的に下げる行為だからです。常に80の力を出していたものが、50くらいに下がるイメージです。
では、なぜ次の日には戻るんですか?
力を出させている命令が、そのまま残っているからです。出力は下げられても、命令そのものは消えていません。だから、放っておけば元の80に戻ります。

つまり、治すために必要なのは、揉むことではなくこの命令をなくすことです。
張りには、2つのパターンがあります
ここが今日の分かれ道です。
ひとつは、自分で作る張りです。腕を曲げて力こぶを作ってみてください。ぎゅっと力を入れ続けていると、硬くなります。これは自分で作った張りです。
もうひとつは、脳が無意識に作る張りです。自分では力を入れているつもりがないのに、ずっと張っている。肩こりは、こちらです。

触った硬さは、どちらも同じです。違うのは、スイッチを誰が持っているかです。
自分のスイッチかどうか、確かめられますか?
できます。今、肩を触ってください。その硬さを意識して、柔らかくしてみてください。
……できないと思います。これが、脳にコントロールされている状態です。自分で作った張りなら、自分の意思で抜けます。肩こりは抜けません。
ですから、肩こりは筋肉が弱いから起きているのではありません。自分で張りをコントロールできない状態です。
自分で作れるものは、自分で抜けます
今日いちばん大切なところです。
もう一度、力こぶを作ってください。力を入れて、その硬さを覚えておきます。そのまま腕を下ろして、もう一度触ってみてください。
さっきより柔らかいはずです。多少硬くても、入れていた時よりは明らかに柔らかい。
自分で作れるものは、自分で抜ける。これが、力こぶでは起きて、肩では起きないことです。

だから、肩こりを治すには、自分で張りを作る練習が要ります。
張っているのに、さらに張りを作るんですか?
そうです。変に聞こえますよね。でも、これが答えです。
トレーニング中、お客様によく言われることがあります。「身体の力の抜き方がわかりません」。そうなんです。筋トレをして張りを作る練習をすると、力を抜けるようになります。
やり方|シュラッグ
肩をすくめるトレーニングです。重りは要りません。
- 肩のあたりを触って、硬さを覚えておく
- 肩をすくめて、上で3秒キープ
- ゆっくり下ろす。一番下まで下げると自分で入れた力が抜けてしまうので、抜けない範囲まで
- 下で1秒止める
- これを繰り返す
- 最後の10回目だけ、上で10秒止めてから、ゆっくり一番下まで下ろす
- もう一度、最初に触ったところを押してみる
柔らかくなっていれば、力が抜けています。家で10回1セットを、毎日やってみてください。
首が太くなりませんか?
なりません。10kg程度の重りを持ってもそこまで太くなりませんし、自重なら尚更です。参考までに、私は100kgでやっています。
抜けた人と、抜けなかった人
やってみると、2通りに分かれます。
力が抜けた人は、張りを自分で作れる状態です。ただし、脳が作る無意識の張りも残っています。毎日繰り返して、その分を減らしていきましょう。
抜けなかった人は、まだ張りを作ること自体ができていません。まずはそこからです。数か月かかりますが、繰り返せば必ずできるようになります。
できた人もできなかった人も、かかる時間が違うだけです。
シュラッグだけでは、全部は取れません
最後に、数字で整理します。
0から100の目盛りがあるとして、今の肩こりが80だとします。この80の中身は、脳が作る40と、押し付けられた40に分かれています。
シュラッグでできるのは、脳が作る40を0に近づけることです。つまり、40は残ります。
残る40は、何ですか?
周りの筋肉が仕事をしないために、肩甲挙筋が代わりにやらされている分です。
たとえば、肩甲骨を寄せる動きは、本来は菱形筋という筋肉の仕事です。菱形筋が働かないと、肩甲挙筋が肩をすくめながら、擬似的に肩甲骨を寄せようとします。この肩代わりが、残り40の正体です。
ですから最終的には、菱形筋に仕事を返す必要があります。その話は別の動画で解説しています。
でも、肩こりの人ほど、まずはシュラッグです。脳が作る40を自分で抜けるようになるところから始めてください。
動画で見る(実技つき)
肩甲挙筋の解剖図、張りの2パターンの図解、シュラッグの実技は動画で見られます。
身体は筋肉ではなく、物理現象として読み解く。これが「運動的IQ」です。身体の使い方を、どの動画から見ても学べる運動の教科書を、数年かけて作っています。
体験・お問い合わせはトレーニングジム PUTTERS(栃木県小山市)まで。

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