たまに聞かれるんです。「自分で式を作るって、どういうこと?」って。
高校までの数学って、正直、暗記だったんですよ。公式を覚えて、当てはめる。それが当たり前だと思ってました。
きっかけは、大学に入って数日の頃。友達と数学の話になって、そいつがサラッと「俺、公式なんて覚えてないよ」って言うんです。私、思わず「は?」って。だって、覚えなきゃ解けないでしょ、と。
そしたらそいつ、こう言った。「センター試験のときも、数学は公式を一個だけ覚えて、あとは全部その場で自分で作る。そうすれば暗記いらないよ」って。
……衝撃でした。私、暗記にはずっと限界を感じてたんです。だから、そこから”式を作る”練習を始めた。これが原点です。
で、その考え方が、後になって、体を教える仕事で効いてくるんですね。
私、本と論文で体の勉強をして、それをお客さんに指導してたんですが、どうしても上手くいかない指導が、いくつも出てきた。教科書通りに教えてるのに、なんか噛み合わない。
それで一度、腰を据えて、体の動きを”式”に書き出してみたんです。
そしたら、「横腹のトレーニング」っていう言葉が、どうしても全体の式を邪魔するんですよ。そこだけ、どうやっても収まらない。
で、思い切って、横腹を単独で置くのをやめた。「横腹は、骨盤を止めて、胸椎を動かした”結果”として働くんだ」って仮定して、式を作り直した。そしたら——全体が、パチッとハマったんです。
でも、半信半疑でした。頭の中で辻褄が合っただけかもしれない。だから、指導のやり方も、その式の通りに変えてみた。……お客さんの体が、変わったんです。
その瞬間に思いました。あ、これは空想じゃなかったって。私が頭の中で作った式は、お客さんの体が「正しい」って証明してくれた。
仮定を立てて、式を作って、それが証明されるまで。5年、かかりました。
大学のあの日、友達がくれた「公式は作れる」の一言が、5年かけて、お客さんの体で証明された。私にとっての「自分で式を作る」は、そういう意味です。誰かの正解を覚えるんじゃなくて、目の前に合わせて、自分で組み直す。時間はかかるけど、ハマった時の景色は、暗記じゃ絶対に見えないんです。
実は、今日話した横腹は、ほんの一例なんです。
体の動きって、いまだに、ちゃんとした教科書が無いんですよ。誰かが正解を作って待っててくれるわけじゃない。だったら、自分で作るしかない。——そう思って今、『運動的IQ』っていう体の教科書を、こつこつ書いています。
あの日「公式なんて覚えなくていいよ」って言った友達は、あのあと博士課程まで進んで、今はパリの大学で研究者をやってます。
あいつが『運動的IQ』を作ったら、たぶん秒で終わるんだろうなぁ。
……まあ、天才は、こんな地味な教科書、作ろうとも思わないか。だから、私が作ります。
これは、栃木県小山市のパーソナルジム PUTTERS の松本の”独り言”です。体のこと・トレーニングのことは、LINEからお気軽にどうぞ。

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